2010/12/13

Post #24 Over The Blakiston Line

Paris
どうやら、北海道出張はなくなりそうだ。
冬の北海道なんて、旅情をいたくかきたてられるが、なかなかに寒そうだ。しかし、どうせ北海道に行くのなら、ここはやはり冬だろう。バナナで釘が打てる程寒いんだろう。だが、俺は寒波に襲われたパリを、革ジャンで乗り切った男だ。何とかなるだろう。いざとなったらユニクロでヒートテック肌着でも買えばいいのだ。しかし、どうも今のところ、話しは立ち消えだ。残念だ。まったく以て残念だ。やる気マンマンだったのに…。
仕方ない。森山大道の写真集『北海道』でも眺めて見るか。どうも北海道の写真と言うと、雄大な自然やキタキツネなんかの野生動物なんかをテーマにしたものが多いようだが、生憎俺はそういう写真にはあまり興味がないんだ、道民の諸君、悪いなぁ。
この『北海道』なる写真集は、1978年の5月から7月、当時、写真に手応えを失っていた森山大道が、鬱と不安に取りつかれ、それから逃れるために睡眠薬を濫用するという状況のなか、再び写真を撮るためにたった一人で札幌にアパートを借り、250本のフィルムを撮影した経験から生まれた写真集だ。当時の森山大道は、自分の撮った写真にやはり手応えを感じることができず、その膨大な写真はごく一部を発表したのみで、長年お蔵入りになっていたという。その辺のいきさつは、河出文庫から出ている森山大道の自伝的エッセイ、『犬の記憶』やその続編である『犬の記憶 終章』を見ればよくわかる。写真を撮ることに、手応えのない鬱屈と、焦燥が滲み出てくるようだ。
Paris
その写真は2008年に、総ページ数664ページという大作としてよみがえった。限定1500部、2万円。Hey Men! 風俗に行って女を買うより、写真集を買ったほうがいいぜ。限定本なら、あとあとかなり値上がりするんだぜ!とはいえ、俺は売らないけどな。
そこには、北海道の美しい自然や逞しく生きる野生動物など写っていない。70年代の北海道の、多くは地方都市の、日常の風景が、コントラストの高いモノクロ写真で、淡々とつづられている。めくっても、めくっても、黒くどこか時代から取り残されたというべきか、むしろ時代を超えているようなある意味殺風景なイメージが集積している。同じような風景が、次々出てくる。そのシーケンスがまた、北海道を強烈にイメージ付けてゆく。どこか、荒涼としたざらりとした感触だ。
しかし、どうでもいいけれど、この写真集、重い。軽く10キロくらいありそうだ。自分がどうやってこんな本を買って帰ってきたのか、さっぱり見当もつかないぜ。あまりに重くて、最後のページが折れてしまった。これはいかん。
仕方ない、貴重な写真集を損なってしまうのもなんだから、これはまたゆっくり見よう。
代わりといっちゃなんだが、札幌宮の森美術館によって制作された、『北海道』のダイジェスト版、『Northern』、『Northern 2』を見るとするか。
これには当時のことをまとめたインタビューも入っているし、『犬の記憶』のなかの北海道に関する文章も収録されているしな。
『Northern』は全編横位置の写真、対して『Northern 2』は全編縦位置だ。潔いレイアウトというか、ダイナミックな編集方針だ。こんなダイナミックさも、北海道を感じさせるぜ。いずれも見ごたえがある。黒がきりりとしまっていて、堪らないぜ。
しかも各3000円+TAXという良心価格だ。これは大切なことだぜ。
この中でも触れられているが、本州のほぼ中央に生まれ育った自分にとっても、北海道はエキゾチックな世界だ。津軽海峡を東西に走る『ブラキストン線』という、動植物の分布に関する境界線がある。北海道はその向こう側なんだ。北海道には、野生のニホンザルはいないんだぜ。ゴキブリだってほとんどいない。つまり、本州以南とは自然だって違うんだ。
むしろ、ヨーロッパに近いイメージなんだ。行ったことないのにそれはないだろうって感じだけどな。冬の北海道なんていうと、いつも飛行機に乗って、ヨーロッパに向かうとき、窓の下に見えるロシアの景色をイメージしてしまう。そう、雪に埋もれた広大な原野に、どこから流れてくるのか見当もつかない大河が、のたうつように黒々とした水を運んでいる、あの風景にきわめて近しい気がするんだ。いつも、そんな風景を眼下に眺めながら、こんな厳しい風土の中を、寒さに耐えながら、冷たい風に涙を流しながら、漂白するような旅がしてみたいと思うのさ。
まだ、俺に若さが残っているうちに、苛酷さに耐えられるエナジーが残っているうちに。
俺の中では、北海道は、それにきわめて近いイメージなんだ。気候風土も、巨大な農地も、なんとなく大陸を思わせる。それも、俺的にはユーラシアの北方につながっているイメージだ。
行ってみたい、冬の北海道に。
それも流氷や知床の自然や、札幌雪祭りを見るためではなく、どんなところで、人々が暮らしているのか、僕のイメージ通りなのかそれともまったく違うのか?それをこの目で確かめるために行ってみたいのさ。あぁ、寒くったって経費がしゃびしゃびだって、出張行きたかったなぁ。
今回は仕方ない、しかしいづれ近いうちに、北海道へ行ってみたいぜ。出来れば青函連絡船に乗って、て今あるのかな青函連絡船?

2 件のコメント:

  1. こんばんは
    北海道出張無くなってしまったんですね
    残念です
    Sparksさんの北海道を撮った写真見たかったです♪
    また次の機会がありましたら是非お知らせ下さい〜

    札幌にいる時に森山大道の写真展、宮の森美術館で見ました
    印象的な作品が色々あったのを思い出しました

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  2. こんばんは、Aria_msさん、いつもありがとうございます。
    うーん、北海道出張なくなって本当に残念です。てか、かなりガックリ。今年ワースト3に入るがっくり感です。
    森山大道、見に行ったんですね。羨ましいなぁ。森山さんは、写真展なんかで3回ほどお目にかかっています。質疑応答で質問した後に、『いつも黒っぽい服を着てらっしゃいますが、やっぱりご自分のイメージカラーなんですか?』なんて質問をしたりしてみたこともあります。いつだったか森山さんにお会いしたときに、『自分たちの写真を見せるスペースを自分たちで作らなきゃならないよ』と言われたことがあります。物理的、資金的になかなか難しいことなんですが、こうしてブログをはじめたことで、森山さんの言葉に一歩近づけたような気がします。
    森山大道と中平卓馬が名古屋に来た際に、お二人から当時吸っていたジタンの箱に、サインをいただきました。これは僕のささやかですが、大切な宝物です。いつかブログでお見せすることになるでしょう。また、そちらにも遊びに行きます。

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