2010/12/10

Post #22 Leaving Here

Osaka
Barcelona
やっとの思いで、俺は帰って来たというのに、また出張だ。しかも、福岡だ。日帰りだ。
調子こいて、お客さんに、経費が頂ければ何処でも行きますなんて言ったのが運の尽きだ。
昨日は昨日で俺のすんでる中部地方の町を起点に、岐阜県、三重県、静岡県と約500キロ車を飛ばして4つの現場をやっつけてきた。さすがに俺のマシーンも悲鳴をあげていたぜ。俺はケツが4つに割れちまいそうだった。今日こそは家で優雅にプリントでもしようって思っていたんだが、この人生なかなか思い通りにならないぜ。
それどころか、来週には北海道に飛ぶことになるかもしれないぜ。仕方ない、これも人生だ。ロックンロールだ。
まぁ、俺の長い人生で九州も北海道も初体験だからな。これは面白い。もちろんカメラもフィルムも持って来た。見知らぬ町で君に会いたいもんだぜ!
随分前から、あちこち廻って仕事をしてきた。まさにドサマワリ人生だ。それで気が着いたのは、平野にビルが立ち並んでいるのは、日本のほんの一部だって事だ。日本の多くの人々は、山に囲まれた小さな盆地に作られた箱庭のような小さな町に住んでいる。入江と低い山に囲まれた小さな町に住んでいる。山の襞を縫うように、ひっそりと村があり、人々は慎ましく自然と折り合いをつけて暮らしている。
随分前に、岡本太郎の写真集を買った事があった。昔、壮年の太郎が日本とは何か?という探究の為に方々をまわり、ニコン(だったと思う)で撮影したフィルムを、写真家の内藤正敏がドラマチックなハイコントラストでプリントしたものだ。
その写真集は『岡本太郎 神秘』というのさ。
俺たちの生活から、神秘というものが消え去ってどれくらいになるだろう?
かつて、俺たちは先祖から受け継いで来た仕来たりを護り、父祖が開いた農地に貼り付くように生きてきた。そこには、テレビもラジオもなけりゃ、ネットなんて夢にも思わなかったろう。日が暮れれば、微かな灯りだけが頼り。夜の闇は深い。しかし、彼らは決して貧しい精神の持ち主ではなかったんだ。
彼らは神秘を知っていたからだ。
ネットなんかなくてもその生活は異界に繋がり、メールがなくても夢告や虫の知らせで、親しい人の消息を知った。自分たちの回りには、神々や精霊が満ち溢れ、先祖の霊は彼岸や冬至夏至などの節目にやって来る。そんな世界観がなくなっても、形式だけで続けられる祭りを見ると、俺は心が痛む。
どんな石器時代だと思うだろうが、そんな世界はほんの数十年前迄この日本にあったんだ。俺の90才になるお祖母さんは、実際にそんな体験をたくさんしていた。子供の頃、風呂に入れてもらいながら、そんな不思議な話しをたくさん聞いたものだ。
かつてパリで、マルセル・モースから人類学を学んだ太郎が、芸術家の仮面を被った人類学者として日本を廻り、数多の写真を撮ったのは、まだかろうじて日本に神秘が残っていた時代だったんだ。
太郎のによって遺された膨大なネガは写真家の内藤正敏によって、神秘が一掃された21世紀に蘇ったわけだ。内藤正敏自身が恐山のイタコや出羽の即身仏などを被写体に撰んできた写真家だって言うのもあるが、そこには生々しい人間の営みと、ローキーで焼きこまれた闇のなかに潜む『神秘』が見事に表現されている。これがスゲーE写真集だって思っているのは、俺とあと他に日本に5人くらいかもしれないがね。
俺は初めてこの写真集を見た時、鳥肌がたつような戦慄を感じたぞ。
そして、まだ見ぬ日本を探して、猛烈に旅に出たくなったのさ。
OK、今日はとりあえず福岡だ。仕事だけどね。心の感度を上げていれば、何かがきっと見えて来るさ。君は、俺が見ているものが女の子ばかりだと思ったら、大きな間違いだ。いや、まぁそれもしっかりは見ているんだけどね。いつか君の町に行くこともあるだろう。
もし、そこで君に会えるなら、それも俺には神秘的なことなのさ。

2 件のコメント:

  1. こんばんは♪
    sparksさんから教えて頂いた『岡本太郎 神秘』、見る事が出来ました!
    日本の神秘の姿が生々しく、こうゆう写真集目にする事が出来て良かったです
    北海道は札幌に来られるんですか?
    こちらはもう冬の気温ですよ〜
    sparksさんの写真と文章、最近の楽しみになりました♪

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  2. Aria_msさん、いつもありがとうございます。太郎、良かったでしょ。また、素敵な写真集を、ご案内します。
    来週の北海道行きはまだはっきりしないんです。あるチェーン店に商品を送っているんですが、その不具合が出たところに行くことになると思います。函館なのか、旭川なのか、札幌市なのか?帯広って可能性もあります。仕事自体はたいした事ないんですが、やっぱり寒いよね。-20℃とかあり得へんし。
    それはともかく、楽しみにして頂いて、嬉しいです。帰りの新幹線でAria_ms さんの
    ブログのバックナンバーをチラチラ拝見してたんですが、自分の寡作っぷりがいささかハズカシーくらいでした。
    とはいえ、最近なんとなく、写真のジャンルは全く違うんですが、なんか勝手に連帯感って言うと重いな、friendshipみたいなのを感じてます。それがしも精進します。

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