2013/06/20

Post #851 Necropolis Part 3

Salé,Morocco
猛烈な雨の中、真夜中まで働いてきた。しかも朝の7時から打ち合わせが入っていたんだ。俺はラーメン屋に寄って夜食を喰らい、そのままお客さんの事務所に行って朝まで眠っていることにした。そして、その駐車場でコンクリートの車止めに車をぶつけてしまい、車止めは木端微塵に粉砕され、俺の車からはオイルがダダ漏れだ。冗談じゃない、つい先日車検から戻ってきたばかりだっていうのに。いったい今度は修理にいくらかかることやら。
こんなことなら、仕事なんてしないで家で寝ていた方がよっぽどマシだぜ。くだらねぇ。泣けてくるぜ。10時になったら、車屋に行ってくるとするか。車屋っていっても、寅さんの実家のまんじゅうやじゃないぜ。クソッ!

イスラム墓地を見ると、いつも思い出す小話がある。
トルコ民話の主人公、ナスレッディン・ホジャの数多くある逸話の一つだ。

ホジャはある時、『わしの死体を埋めるときには、さかさまに埋めてくれ』と友人たちに言いました。
どうして?とみんなが訊くとホジャは次のように答えました。
『最後の世の中になった時、何もかもひっくり返る大騒ぎになるっていうからさ。さかさまに埋めてあったら、わしだけは正しい姿勢でいられるだろ。』
俺は、こんなひねくれ者が結構好きだ。
俺は、イスラム墓地を見ると、この中にひょっとして天地さかさまに埋葬されてるファンキーでへそ曲がりのジジイがいるんじゃないかと想い、ふと面白みを感じる。

死に関するホジャの小話をもう一つ。

人が死んだ時、どんなふうにそれを知ることが出来るのかとホジャが友人に問うと、友人は手足が氷のように冷たくなるので死んだとわかると答えた。
その2、3日後、ホジャは森で木を伐っていた。とても寒い日で、ホジャの手足は氷のように冷たくなってしまった。そして、ホジャは友人の言葉を思い出し、『どうやら俺は死んだらしいぞ』と考えた。
ホジャは雪の上に横たわり、誰かがやってくるのを待ってみたが、いつまでたっても誰も来ない。
そこでホジャは考えた。『仕方ないな、自分で行くしかあるまいて』
ホジャはふらふらと家路を辿ると、玄関でカミさんに『わしは山で死んでしまったよ!みんなを呼んで葬式の支度をしておくれ!分かったな、頼んだぞ!』と言うと、また森に引き返して雪の上に横たわった。
ホジャのカミさんは驚き悲しみ、隣人にホジャの突然の死を告げて回った。
隣人は不思議に思い、『森で死んだというけれど、誰が知らせてくれたんだい?』とホジャのカミさんに訊いたところ、カミさんはこう答えたのさ。『気の毒なあの人。森で一人っきりで死んで、家まで自分で知らせに来なければならなかったのよ。こんな悲しい話ってないわ・・』

ナスレッディン・ホジャは、13世紀から14世紀にかけてトルコのアナトリア地方に実在したとされているとんちジジイだ。彼にまつわる話は永年にわたって、口伝えで何百も伝えられている。当時のトルコは中央アジアのティムール朝に侵略占領されており、ホジャが暴君ティムールに対して、捨て身のユーモアで反抗する話も多々ある。

村人の寄合の席で、ホジャは征服者ティムールの暴虐ぶりを遠慮なく批判していた。しかし、その席には暴君ティムール本人が、お忍びで紛れ込んでいたのだ。
ティムールはホジャの批判に対して、『少し言い過ぎじゃないのかね?私の知る限り、ティムールはそんなに悪いニンゲンではないよ』と言いました。
見慣れない男に対して、ホジャは尋ねました。
『あんた、いったいどこから来なすったのかね?』
『トランスオキサニア(ティムールの出身地)からだ』
『名前をお聞かせ願えないかね』とホジャ。
『ティムールだ』
その答えを聞いたホジャ、足も声も震えあがった。
『もしや、お名前のまえに、スルタンという尊称がつくお方で・・・?』
『その通り!』
ホジャは村人の方を振り返って言いました。
『村の衆よ、わしの葬式には来てくれよ。間もなくだから・・・』

他の話しでは、ホジャはティムールの暴政に苦しむ村人を代表して、ティムールに会いに行く。
そしてティムールにこう訊いた。『陛下はこの町から出ていくつもりはございませんか?』
ホジャの率直すぎる物言いにティムールは怒りをあらわにして答えた。
『そのつもりはない!』
するとホジャはすかさずこういった。
『出ていかないというんなら、わしにも考えがある!』
それを聞いたティムール、『どうするつもりだ?お前ごときにいったい何ができる?』とホジャに詰め寄った。そしてホジャはこう答えた。
『なぁに、大したことじゃない。わしらがこの町から出ていくだけさ。』

俺はこんな身の破滅的なユーモアってのが好きだ。絶大な権力に対抗するには、ユーモアが必要だ。俺はいつもそう思う。

読者諸君、失礼する。そろそろ車屋にいかなけりゃならないんだ。ついでに言うと、ここ何日も、咳が止まらない俺だから、自分の修理にも行きたいものさ。 

2 件のコメント:

  1. 墓3連発!!! 

    ホジャはたぶん言います。
    「お前は墓を盗む気か?!」

    いろいろ興味深いです。

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  2. まぁ、ユーモアが必要だってことで。
    この一連の写真を焼いた時から、ずっとホジャの話しを取り上げたいと思っていたんです。
    そしたらたまたま、親戚のおじさんが死んじゃって、なんか疲れましたね。このブログ書いてから、寝てましたもん。
    車ですか、アレは結局オートマチックトランスミッションのオイルがダダ漏れで、自走不可になってました。僕が逆さに倒れそうですわ。

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