2014/04/18

Post #1109

神農老街、台南
なんだか、こうして見ていくと、日本でもこんな風景は目にする事が出来ると気が付く。
そうして、普段それに気が付かないのは、自分の目の怠慢のせいなのだ。

クソみたいな仕事のおかげで、なんだか全身筋肉痛だ。熱も出てきた。
しかし、男の稼業は『倒れる迄やれ!倒れたら這ってでもやれ!』が基本だ。代わりの効くような仕事は、プロの仕事ではないのさ。
サボっちまいたいが、そうもいくまいて。
で、医者に寄ってから仕事に行こうと夕暮れの道を、ドクロの握りのついた杖をつきながら、ふらふら歩いた。
途中、どこかでウグイスが啼く声が聴こえる。俺は口笛でウグイスの啼き声を真似てみた。少しいい気分だ。
すると、俺の口笛に応えるように、かすかに猫の声がする。
この声は子猫だ。
声のする方に目をやると、廃屋の壁の中から声がする。
これはなんかの拍子に、壊れた壁の板の隙間から、子猫が入り込んで、出られなくなってしまったにちがいない。
以前にも、そんな事があった。お店の天井裏に猫が住み着いてて、子猫を育てていたようなんだが、柱巻きの壁の中に落っこちて、一日中子猫の鳴く声がするってんで、壁を破って子猫を3匹救出した経験があるのだ。そこそこ長生きしてると、いろんな経験をするもんだ。
いま、発熱で朦朧とした俺の前に、かわいそうな子猫が廃屋の壁の中で助けを求めている。まかせとけ。
義を見てせざるは勇無きなりだ。
俺は疲れきった肉体から、渾身の力を絞り出して、壁の下地の木材をバキバキと剥ぎ取り、半ば腐りかけたような新建材の壁板を、叩き壊した。杖をテコにして、バリバリやっつけてやったぜ。まるで、なくなりそうなマヨネーズのチューブを、絞り出すようして、力を引き出した。
汗が吹き出る。
ハンカチもTシャツもベトベトだ。
熱があるんだ、当然だろう。
気持ちいいぜ。
自分で言うのもなんだが、俺は、微かな声を聞き取る感性と、助けてやりたいと思う優しさと、実際に力を奮って成し遂げるタフさがそなわったナイスガイなのだ。
俺が女や金に縁がないのは、世の中ではそういった素質は求められていないからだ。

子猫の声は止んだ。どうやら、俺の乱暴力に、震え上がっているようなのだ。
心配はいらない。とって食ったりしやしないさ。
それで、こいつがその子猫さ。

読者諸君、失礼する。今も熱に苦しみながら働いている。けれど、そのお陰さんで、こいつが廃屋の壁の中で死なずに済んだと思えば、まぁ、悪い気はしないね。

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