2014/10/17

Post #1290

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旅先でマシンのように写真を撮った。
ネパールは、本来のネパール人的文化と、チベットやインドなどの外来の文化が完全に融合することなく、モザイクのように絡み合っていた。だから、場所によっては360度、どこを切り取っても写真として成立してしまうだろうと思わせるものがあった。

物売りの声喧しい市場と真剣なまなざしで品定めする男や女。

行き交う人々の波、それを強引にかき分けて進む軽自動車、バイク、トラック、そしてリキシャ。

突如として現れるゴミの山。

所在なく街をうろつく犬、犬、犬、そしてニワトリとヤギ。

辻辻に現れる寺院。

レンガ造りの建物の向こうに聳えるストゥーパ。

駆け回る子供たち。

神々を讃えて歌う老人たち。

森の中を進む象。

強烈な色彩で神々の姿を描き、曲がりくねった道を疾走するデコトラ。

可能な限り、考えるまでもなく、歩きながら夢中でシャッターを切った。
ファインダーも見ることなく、ひたすらにシャッターを切った。
肉眼にも焼き付けるようにして、目を見開いて歩き回り、言葉も満足に通じぬ人々とたどたどしい英語と時には身振り手振りで話し合い、カメラに収めた。
インドを襲った巨大サイクロンの余波で、季節外れの叩きつけるように降りしきる雨の中でも、ずぶぬれになって写真を撮り歩いた。

それでも、捕らえ切れなかったたくさんのイメージ。
走りすぎる車の中から、一瞬垣間見た数々の映像的断片。

トラックや長距離バスが疾駆する道沿いで、木陰に胡坐で座っていた少年は、どこか生身の仏を思わせた。

切り崩された山肌からドクドクあふれる赤茶色の水は、山の流す血潮のようにも感じられた。

水場で髪を洗う女の、濡れた服は、女の身体のラインを露わにし、一瞬にしてその肉体の手触りを感じさせた。

狭い道で、正面衝突をものともせず、追い越してゆくツーリストバスの客席で、疲れ果てて眠る女や男。

そのバスの屋根の上に、無造作に積まれた荷物とともに座り、前を見つめ、来し方を眺め、あるいは流れる景色に思いを馳せる若者たち。

町はずれに、粗末な布で作ったテントで暮らす難民のような人々。


或いはまた、その現実を突如として突きつけられて、思わずひるんでしまって、カメラを向ける事すらできなかった人々もたくさんいる。

癩病だろうか、崩れた手足を包帯でつつみ、道端にうずくまる女性。

顔と身体の右半分が、溶けた蝋燭のように変形して、立つことすらままならず、道行く人々に施しを求める男。

観光客に写真を撮らせ、法外なチップを要求するヒンドゥー教の苦行者サドゥーたち。

勝手に人の荷物を運んでおいて、厚かましく日本語でチップをねだる口髭の空港職員。

誰かに全て切り取られたのか、それとも生まれながらなのか、一本も指の無い手を差し出して、キラキラ輝く瞳でギブミーマネーと施しを求める小さな女の子。

一瞬で飛び去ってしまった、美しく輝く色鮮やかな翼を持った鳥たち。

それら自分の網膜という肉眼レフに捕らえることが精一杯だった数々を思うと、自分の腕の未熟さと、非情なまでの度胸がないことが、ただ口惜しい。

ともあれ、25日には、ラボからネガが帰ってくる。何がどう写ってるか、俺は知らないのさ・・・。

読者諸君、失礼する。君たちに、本当に見せたいのさ、俺が見てきたものを。

2 件のコメント:

  1. 素晴らしいですね〜。
    文章を読んでいると、書かれている様々な光景が浮かんでは消えていきます。

    写真楽しみにしてますよ。

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    1. ころさん、文章に惑わされてはなりません(^_^)。
      お金はこの手に握ってから、写真はこの目でしかと見てからですよ!とはいえ、自分が一番楽しみにしてるかもしれません。待ちきれないよ。

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