2015/05/06

Post #1491

HongKong
今回の旅行の間にも、いろんなことがあった。
内縁のカミさんとのことだ。

内縁のカミさんが、子供を作りたがっているという話は、ずいぶん前に書いた。彼女はもう42歳で、年齢的には限界だろう。その話が出てから、何度もトライしているんだが、なかなか簡単にはことは進まない。最初は勢いで乗り気になった俺だが、なかなかうまくいかないと、心中焦ってもくるし、また疑念も起こってくる。正直、何回か受精はしても、子宮内に着床する前に流れてしまったんではないかってこともあったようだ。
おまけに、年齢的に不具や障害児が生まれてくる可能性だって高いから、血のつながった子供は諦めて、養子をもらったらどうかという、一見真っ当そうでいて、すごく失礼なことを言われたりもした。理念としては正しくても、情念として納得いかないこともあるのさ、人間だもの。

子供を持つことを考えると、自分が真っ暗な闇の中、断崖絶壁の端に風に煽られながら立ちすくんでいるような気分になる。

自分の人生の可能性が、それで狭まってしまうのではという、懼れのような感覚だ。

誰しも普通にやっていることが、俺にはどうにも取り返しのつかない道に、一歩を踏み出すような恐ろしいことに感じられる。

親愛なる読者諸君、君たちはひょっとしたら気が付いてるかもしれないけれど、俺はどこか尋常の人間とは違う、何か「だいそれたこと」に心捉われている人間だと、自分のことが思える。
その尋常でない「だいそれたこと」ってのが何なのか、自分でもはっきり言えないけれど、生とか死とかいう抜き差しならないことや、他人を愛すること、社会とどうかかわるかってことにかかわっているように思える。
それは、ある意味ですべて幻想かもしれない。いやむしろ、俺という一人の人間が病理のように抱え込んでいる妄想と言ったほうがイイかもしれない。
そんなことを思うのが、自分でも大人になり切っていないと感じるけれど、それが俺に文章を書かせたり、狂ったように写真に向かわせたりする。
そして、その「だいそれたこと」に近づいて行こうと足掻くとき、その俺の姿は、世の中の常識や倫理から逸脱したものに見えるかもしない。その表面的なあらわれだけをみて、反吐が出るって吐き捨てるように切り捨てられることすらあるだろう。

けれど、俺はいつだって、至って真剣なんだ。わかってほしい。

今回の旅の間、カミさんは子供を作るために、あれをせがんできた。

俺は決してアレが嫌いなわけじゃない。むしろ、お好きな部類だと思う。
けれど、俺は、子供を作るためにするってのが、どうにも本末転倒な気がして、ふさぎ込み、途中でやめてしまった。
そういうもんじゃないだろうって思ったのさ。俺はカトリックの信者じゃないんだからな。
それに、俺の残り少なげな人生、ひょっとしたら他の女性に心奪われて、今のカミさんと別れてしまう可能性だって、ゼロじゃないんだから…。
こればかりは、男と女のことだから、まったくわからない。人の縁というやつは、どこでどうつながっているのか、皆目見当もつかない。
そうなったとき、自分の子供がいることが自分にとっても、彼女にとっても、そして当の子供にとっても良いことなのか、どうにも判断出来なかった。

籍も入れずに彼女とは20年連れ添ってきた。それがすでに尋常じゃないってのは理解してるつもりだ。それが良かったのか、悪かったのか。
その間に、どうして子供を作らなかったのかと、詰るように問われるかもしれない。
けれど、それには自分なりの葛藤だってあったし、経済的な不安もあった。
自分が母親とは早くに死に別れ、父親とは一言では説明できない根深い葛藤だってあったから、家族ってものに対して、嫌悪感のようなものを抱いていたのかもしれない。
だから、その点で俺を責めないでほしい。誰にだって事情はある。
過ぎてしまった時間を取り戻すことは、俺にだって君にだって出来やしないのだから。
俺たちにできるのは、それを受け入れて、最善だと思えることをするだけだろう?違うかい?

なにより俺は、自分が世界で一番信用できない。
これは勝手な男の、勝手な言いぐさかもしれない。
けれど、自分自身に可能な限り誠実に対したとき、それこそ真っ暗闇のなか、険しく細い尾根を手探りで歩いているような恐ろしさを感じたんだ。
どうか君には解ってほしい。

それから二日ほど、自分とカミさんは日中別行動で、俺は独りで電車に乗って、まったく見知らぬ北欧の街をカメラ片手にさまよっていた。写真を撮りながら、食事もとらず、強い海風に煽られ、時折降る雨にも傘すらささず、ひたすら自分を罰するように歩き続けた。
そして、この旅から帰ったら、カミさんと別れることすら考えた。
どうしても子供が欲しいのなら、他の人と作ってもらってもイイんじゃないかってことだ。俺みたいな訳のわからん非常識な人間の子供なんて、考えただけでも大変な人生を強いられるのは間違いないからな。

で、ある晩のこと、カミさんは泣きながら訴えてきた。

『自分の人生は、子供を作れなければ、何の意味もない』って。

読者諸君、今日はここまでにしておこうよ。自分で書いてても、なかなかに厳しい話題なんだ。のろけを書いてるつもりはまったくないんだぜ。自分の中ではギリギリのことを絞り出すように書いているつもりなんだ。心が落ち着かないんで、あてもなく車を転がしたい気分さ。
失礼する。

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