2015/05/24

Post #1509

Bremen,Germany 久々にこんなのを焼いてみた。
同窓会に行ってきた。

そもそもあまり乗り気ではなかったんだが、今回はしぶしぶながら行ってみることにした。なにしろ、俺の通っていた高校は、中高一貫の私立学校で、同級生は医者の倅だの結構な会社の社長だのなんだのかんだのって、羽振りのよさそうな連中が勢ぞろいだ。
そんな連中の中に、地虫のように世間を這い回ってきた俺がのこのこ顔を出しても、扇風機に糞をぶっつけたような気分を味わうことになるんじゃないかと思っていたのさ。

一応、俺だって社長なんだけどな。社員は俺しかいないけど・・・。

そんなわけで、気後れというか、世界が違うっていうか、そんな思いが先行してたんで、まったく乗り気じゃなかった。そんなに会いたい奴もいないし、そもそも俺、同級生のこと、ほとんど覚えちゃいないしな。卒業アルバムすら、若い時期のどさくさで失われてしまったんだ。

仕方ないだろう、高校を出たのが、1987年だぜ。
世界はまだ冷戦構造末期だった。ソ連があったし、ドイツは東西に分かれていた、そんな大昔だ。以来、ほとんどの同級生とあったことはない。
そういえば、卒業式も寝坊して、しかも雪が舞っていたんで、そのまま欠席した覚えがあるな。
いまさら、どうだってイイと思っていたんだ。
けれど、すっかり爺さんばあさんになった先生方が、一番印象に残ってるのは俺ということで、ずいぶん会いたがってると聞いたんで、仕方ない、冥途の土産に出かけてくるぜってことにしたんだ。

普段着でイイって聞いたんで、俺はいつものようにヒョウ柄の薄手のカットソーに、スキニーパンツ、パイソン柄の型押しを施した黒の革ジャン、そしてピンクのパイソン柄の横着そうな靴を履いて出かけたんだが、はめられた・・・。
こんな格好の奴は他には一人もいなかった。たいていどいつもこいつも、ジャケット姿だ。百貨店の紳士服売り場の広告に載ってるような、俺からすれば野暮ったい格好だ。日曜日のおじさん候だ。中にはスーツの奴もいる。

誰だよ、普段着でイイって言ったのは!もっとも、俺がスーツを着てきても、絶対にカタギの世界の人間に見えないからな。これでよかったのかもしれないな。まぁ、誰もかれも、俺のスタイルは、俺らしいといって受け入れてくれたからよかったがな。

結論から言うと、俺は死んだっていう噂が立っていた。冗談じゃないぜ。
これは、おもに女性たちの間でまことしやかに信じられてきたようだ。
もう一つの噂は、俺が作家になったっていう話だ。こっちは野郎どもの間にささやかれていたようだ。
どいつもこいつも、今の俺が、30年前のイメージと体型のまま現れて、いったい何をして暮らしているのかさっぱりわからなかったようだ。俺は職業を尋ねられると、『あててごらんよ?職務質問されると、おまわりはバンドマンか?美容師か?って聞いてくるけどね』ってはぐらかしてたからな。

一通り、名前と顔が一致する奴、向こうは俺を覚えてるけど、俺はすっかり忘れ去っている奴と挨拶をかわし、ホテルの11階の窓から外を眺めていた。
すると、誰かがすごい勢いで近づいてくる気配を感じて、俺は振り向いた。

そこには、小学校から同級生だったK子が、嬉しそうに立っていた。そうして、すごくうれしそうに俺が同窓会に来たことを喜んでくれている。俺は、女性にこんな風に扱われるのに慣れていないんで、きっと頓馬な表情で彼女を見つめていたんだろう。

相変わらず、可愛らしい。
へんに老け込んでなく、昔の少女時代のイメージのまま大人になっている。他のおっさんどもはわからなくても、この人だけはわかる。笑顔も、えくぼも、少し茶色いきれいな瞳も、昔のままだ。肌だって、きれいだ。
俺は世間の塵芥にまみれて、こんな体たらくだというのに・・・。

高校を卒業して、彼女はすぐに結婚したと聞いていた。今は東京に住んでいるという。
もう30年近く思い出すことすらなかった人なのに、も・の・す・ご・く、切ないような、照れくさいような思いが胸の奥から瞬間的に吹き上がってきて、俺は思わず一歩、二歩と距離をおいてしまう。
すると彼女はその距離を、一歩、二歩と詰めてくる。俺はまたまた一歩、二歩と動くが、それすらも彼女は詰めてくるんだ。いや、そんなに喜んでもらえると、ますます照れくさいじゃないか・・。
まだ素面だったんだが、何をしゃべったかまったく記憶にないくらいだ。まったく、この俺をそんな風にしちまうなんて、彼女は素敵な女性だってことだ。素敵な女性には、歳なんてカンケーないんだぜ。

他の同級生の女性には、軽口だってぶちかませる。けど、彼女にだけはちょっと照れくさくて、なんにも言えなくなってしまう。
俺にとっては別格の存在なんだ。
そもそも、俺が中学受験することにしたのは、この学校の数学教師の娘である彼女が受験するってんで、俺もその気になったわけだ。そう考えれば、彼女は今日の俺を作ったキーパーソンだ。

う~む、まいったなぁ・・・。こんなこと、予想してなかったぞ、俺。
俺は、照れくさく、会が始まっても、彼女から離れて座り、素面じゃやってられないぜって風情で焼酎をロックでガンガン飲み続け、誰よりも大騒ぎ、ゲラゲラ高笑いして、何度も椅子から転げ落ちていた。
まぁ、いつもの仲間うちの飲み会のノリ、そのままってこった。金回りでは負けてても、ノリにおいて俺の右に出るもの無しだ。俺自体が別格の存在だ。圧倒的なプレゼンスだ。良識ある人々には、まったく顰蹙ものだな。司会をやってた同級生に、名指しで注意されちまったよ。

他の同級生の女の子が、K子と話しておいでよって、何度も言ってくれたけれど、俺は恥ずかしいから、無理!って言って、焼酎をロックで飲み続けた。

会が終わって、一言二言彼女と言葉を交わした。ついでに携帯の番号も交換したけどな。
何とも言えない、恥ずかしいような、有り難いような、切ないような感情がこみあげてきて、泣きそうになっちまったよ。これから先、逢う機会なんてあるのかな?
やっぱり、もっと話しておけば良かったな・・・。

彼女たちは、女性だけでお茶をしに行くと言って帰って行った。
俺は二次会にもゆかず、一人電車に乗って帰った。
電車を降りて駅舎を出た途端、猛烈な吐き気に見舞われて、ロータリーの雨水マスのグレージングに反吐をぶちまけた。そうして、よろよろとタクシーに乗り込み、動き出したとたん、再度吐き気に見舞われて、車を止めてゲロはいた。

そうしてさっきまで、ひっくり返ってねむっていたのさ。あぁ、腹がすいて眠れないぜ。

読者諸君、失礼する。どうせ俺にはこんなのがお似合いさ。ロマンチックの欠片もないのさ。昔の彼女に反吐が出るって言われたことすらあるくらいだからな。

0 件のコメント:

コメントを投稿