2015/06/22

Post #1538

Bremen,Germany
俺はいつも、自分のことばかり話してるように見えるかもしれないけれど、自分ではそうは思ってないんだ。
この世界の事や社会のことを、自分の経験したことや学んだこと、そして何より自分が正しいと信じていることに照らし合わせて、自分の力で考えて、自分の言葉で語りたいと思っているんだ。

それが正しいかどうかは、俺には分からない。もちろん、俺は自分でできるかぎり研鑽して、借り物の知識じゃなくて、自分の実感として腑に落ちるところまで考えて、それが君にどう伝わるのかを考えて語っているつもりなんだけどね。

だから、漠然とした日常描写の中に、とっても大事な考えを、そっと忍び込ませてみたくなる。
ただ字面だけおっていたら、大人になりきらない中年男のぐでんぐでんな日常茶飯事に見えるかもしれないけれどね。
けれど、どっかの学者や批評家が書いた言葉を、そのまま俺が語っても、上滑りするだけで、君の心に何も残りはしないだろう?

たとえば、中年男のだらしのない欲望を語っているように見えて、家族制度や男女の性愛の形を規定する社会通念に、俺なりに疑問を呈したりしてるわけだ。
もし君に行間を読む力があるのなら、この男、なんだかおかしなことを真剣に考えているなとか思ってくれると、嬉しいものさ。
あるいはまた、自分が出会ったおかしな人のことを語るときに、その人をそのようにさせている社会そのものについても、ひっそりと語りたいと願っているんだ。
ときには、俺たちの暮らすこの日本とは、まるっきり違う国での体験を書くことを通じて、俺たちの社会の抱えている病理を影絵のように映し出したりしたいと思っているんだ。

自分の目で見たこと、聴いたこと、触れたことすべてが、世界の断片で、何かのメッセージを、俺に訴えかけてきているように思えるのさ。
残念ながら、そのすべての意味を汲み取ることなんかできやしないけれど。
俺はそれを理解するだけの感性と知性が欲しい。そして、自分がいまここにある意味を知りたい。
そう思っているのさ。


小説家、高橋源一郎が、2011年4月から毎月一度、反日新聞として保守の皆様に毛嫌いされている朝日新聞紙上で続けてきた論壇時評が、一冊の新書にまとめられた。

『ぼくらの民主主義なんだぜ』という、素敵なタイトルの本だ。

朝日新書から出ている。お値段780円+TAXだ。
俺は、少年の頃の自分に、『さようならギャングたち』や『ジョン・レノン対火星人』などで衝撃を与えてくれた(それは俺にとっては、村上春樹や村上龍以上の衝撃だったよ)高橋源一郎が、気さくで穏やかな自分の言葉で展開してくれるこの論壇時評を、毎回楽しみにしてきた。
そこでは、原発や、労働問題や、テロや憲法、俺や君が暮らすこの世界が抱える、様々な問題が取り上げられてきた。
源一郎さんは、俺たちと同じ素人として、つまり一人の市民として、その様々な問題に向き合い、俺たちにも、自分自身で考えるように促してきた。その姿勢は、俺にはとても誠実なものに見えたし、とても好感が持てるものだったのさ。

そして俺は、いつも考えさせられてきた。

出来ることなら、君にもこの本を読んでみてほしい。そこで取り上げられているどの問題も、未だに解決してはいないから。
君は世界や社会のことを考えたって、意味なんてないと思うかもしれない。自分の生活で精一杯だよっていうかもしれない。
けれど、それはけっして無意味なことだとは俺には思えない。
なぜって、俺たちはみんな、この世界に生きているんだし、この社会をかたちづくっているのも、他でもない俺たち自身なんだから。

読者諸君、失礼する。どんなことでも、自分の実感に引き寄せて、そこから考えるべきだと俺は思う。自分の言葉で。

2 件のコメント:

  1. さっそく買って読みます。
    明日は出雲大社に参拝します。

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    1. かつて、平安時代には、出雲大社は今の高さの倍、48㍍あったそうです。さらにそれ以前にはその倍の96㍍あったと伝承されています。いろいろと謎の多い神社です。楽しんで来てください。
      あと、源一郎さんの本を読むと、僕がパクってるんでないの?って思われるかもしれませんが、いつも自分が気になって書いたことと、リンクするような話が掲載されるので、スゴく身近に感じていました。
      彼も僕も吉本隆明チルドレンだし、金子光晴ファンなので、自然と世の中に対する関心の持ち方に、通じるなにかがあるように感じています。

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