2015/08/23

Post #1601

Kathmandu,Nepal
月が綺麗なので、ウィークリーマンションの向かいの公園で、月を眺めていた。
シャワーを浴びて洗ったばかりの髪を、優しい風が撫でるように揺らしていく。
築地は隅田川からの風が吹くのさ。
月を眺めながら、逢いたくてもなかなか逢えないあの人この人を想うのさ。
切ない気分になってくるもんだ。

そんな感傷に浸っているうちに、すっかり月は雲に隠されてしまった。
仕方ない。俺は愛用の下駄(こいつは歯がないから『右近』というらしい)をカランコロン言わせながら歩いていると、聖路加病院のほうから、スタイルのイイ素敵な女性が、歩いてきた。派手すぎないがセンスのイイブラウスに、スキニーパンツのイイ女だ。
街を歩けば、イイ女なんてのは、このご時世ごろごろいるが、袖も触れ合わないのは他生の縁すらないんだろう。俺には関係ないってことだ。
しかし、この女性の足元を見て、俺は腰が抜けそうになった。
普通なら、ハイヒールのサンダルかなんかを履いてそうなスタイルなのに、彼女が履いていたのは下駄、しかも一本歯の下駄だったのだ!そう、天狗が履いてるあの下駄だ。
世の中、俺の予想を超えることがおこるものだ。

彼女の姿を見て、さすがの俺も思わず、『負けた!』と呻いてしまったぜ。
そう、名古屋のファンキーガッツマン№1のこの俺がだ!

それに気づいた彼女がこちらをちらりと見たので、俺はすかさず『一本歯とはいかしてますね!負けました』といって話しかけた。
彼女も俺が鬼太郎みたいにカランコロン言わせて歩いているので、下駄を履いてると気が付いていたようで、『いえいえ、そちらもなかなかイイ音してますよ』と言ってくれた。
彼女の話では、彼女は腰椎を悪くして、どの医者も回復の見込みがないと言っているのが癪で履き始めたのだという。どうやら、一本歯の下駄は腰痛にイイみたいだな。確かにバランス感覚を養いつつ、体幹が鍛えられるようだしな。

負けん気の強い俺は感心しつつもちょっと悔しいので、『この下駄だって、素敵なんですよ、ほら』って、履いている下駄を脱いで見せてみた。
俺の下駄は脱いで左右を揃えると、虚空に吠える虎の姿があしらわれている。近所の履物屋で5,000円で買ったんだけどな。ちなみに、般若の面というぶっとんだ意匠もあったが、それじゃさすがに昭和のヤクザみたいなんで、虎にしたんだ。

彼女は、それを見て、『ほんと、素敵ですね』って感心してくれたんだけど、ついでに俺の足を見て、『下駄を履いているだけあって、足が綺麗ですね』って変なところを誉めてくれたよ。

俺はそこですかさず、こう切り返したのさ。
『心はもっと綺麗です!』
ダッハッハ、これは本当の話だぜ。

読者諸君、失礼する。少なくとも、行きつけの中華料理屋、築地駅前の寿楽の帰り道、公園で酒盛りしてひっくり返って眠っているサラリーマンの親父よりかは、よっぽど綺麗な心を持ってるつもりさ。

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