2015/09/21

Post #1630

Tainan,Taiwan
仕事の合間に本屋をのぞいてみる。
俺の現場は、老舗本屋のビルを間借りしてるテナントなんだ。
あくまで、名目上は工事の騒音がどれくらい聞こえるかの確認だ。
けれど、俺は本が好きなんだ。
たくさんの本がある。本屋だから当然だ。
なにか読んだことのない本を探して、本棚から本棚をうろつく。
色とりどりの背表紙が、魅惑的な文句で俺においでおいでしている。

いつも、一冊で世界を貫く真理に触れるような本に巡りあいたいと思っていた。

けど、そんなものはないんだ。世界を貫く真理なんてものが、実はないように。
だから、次々と本を買い続ける羽目になる。

小説はいまはいい。なぜって、誰かの書いた架空の人物のドラマよりも、俺の人生のほうが俺にとってはよっぽどドラマチックだから。

旅行記は確かに読みたい。けれど今読んだら、どこか遠くに旅立って、もう帰ってきたくなくなってしまうだろう?危険すぎるさ。俺には麻薬と同じだ。

写真集かぁ・・・。あいにくと俺が欲しいような写真集は、普通の本屋にはあんまりおいてないのさ。アイドルの写真集なんか、欲しくないしね。

小難しい哲学書や思想書も、いまはいい。俺は頭の中から理論や理屈を放り出して、軽やかになりたいから。墜落寸前の飛行機が、荷物を捨てて、なんとか飛び続けようとするようにね。

歴史書も読みたくない。確かに興味はあるけれど、どの歴史も、ある視点からのものに過ぎないのさ。一方の立場に加担したくない。人間はいつだっておかしなことしかしちゃいないしな。なによりかにより、これ以上頭の中にトリビアを増やしてどうする?

自己啓発を促すようなビジネス書なんかには、はなっから目もくれないさ。



こうして俺は、何も買わずに現場にもどり、休憩時間にはカバンから本を取り出す。

いつも身に着けるように持ち歩いている『古今和歌集』と金子光晴の詩集『女たちへのエレジー』を。好きな詩は、いつだって自分の人生に響きあっているように感じるものさ。

読者諸君、失礼する。人生は本の中で展開してるんじゃない。ましてやTVやスマホの画面のなかでもない。

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