Photographica #B


 Brassaȉ

Paris

Taschen刊

1899年、ドラキュラ伝説でおなじみのトランシルヴァニアで生まれたギュラ・ハラスはブタペストで教育を受け、ブダペストとベルリンで美術教育を受け、1924年にパリに出てきた。

彼は画家を目指していたのだが、次第に自分が目にする者の方がはるかに興味深いことを発見し、写真にのめり込んでいく。
そして、1929年に写真家に転身した。

1932年に彼は、自らの出身地ブラッソ村にちなんで、ブラッサイと名乗り、一冊の写真集を出版し、成功を収めた。
それが、『夜のパリ』だ。
このタッシェンから出ている写真集には、それが収められている。


ブラッサイは、俺のなかではやはり夜の写真家だ。
売春婦や乞食、自転車に乗ってパトロールする警官、霧のなかの幻想的な風景。いかがわしい社交クラブ、恋人たち。
時代と国は違っても、俺はブラッサイの写真を見るたびに、激しくインスパイアされる。
右の写真なんか、まるでリドリー・スコットの映画『ブレード・ランナー』のワンシーンのようだ。
疲れた捜査官に扮したハリソン・フォードが、逆光の中を歩み出てきても、驚きはしないぜ。

当時の写真機やフィルムの性能を考えると、これは驚異的な写真だと言っても過言じゃない。
この写真集には、くわえ煙草で、手をコートのポケットに突っ込み、木製の三脚の上に据えた蛇腹カメラのファインダーをのぞくブラッサイのスナップが収録されている。
三脚の上にカメラをつけたまま、被写体を求めて夜の街をさ迷い歩くブラッサイの姿が思い浮かぶってもんだ。
最初は霧にかすんだポン・ヌフ橋とか撮っていたんだろうけど、どんどんと写欲はエスカレートしていったことだろう。




街角に佇み、客を待つ売春婦。
こういう写真を見ると、俺の写真はブラッサイの系譜の上にあるんだってことが、自分ではっきりわかるよ。
光芒、フレア、逆光の中でほとんどシルエットと化した売春婦。そして、彼女の長く伸びた影。

完璧だ。
ジョルジュ・バタイユの短編小説のような物語が、ここから展開していくんじゃないかって気がするよ。

まぁ、お喋りはいいから、じっくり見てみようぜ。
このタッシェンから出てる写真集は、とてつもなくお値打ちなんだ。
もし君が、夜の写真を撮るのが好きで、ブラッサイのことが気になったなら、アマゾンか何かで探してみることをお勧めするよ。

因みに、ブラッサイはパリで人類学を学びながら、芸術家としても名が売れていた岡本太郎とも友人だったそうだ。
岡本太郎は、ブラッサイから写真の引伸機を貰ったそうだ。もっとも、そいつは空襲で焼けてしまったそうだがね。



この写真は、俺が時折いく店の壁にかけてあるんだ。
これが壁にかかっているのをみて、その店がとても気に入ったよ。誰の趣味かは知らないけれど、なかなか解かってるじゃないかってね。
もっとも、そいつは、車のヘッドライトや街灯の灯りに、LEDのチカチカする照明がはめ込まれていたんだけどな・・・。

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