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| Singapore |
路上で華人の老人たちが、髪の乏しい額を突き合わせるようにして、額を彫っている
職人であろう老人は鑿と金槌
見守る二人の老人は、依頼主であろうか
それとも額に揮毫した書家であろうか
はたまた近所の茶飲み友達か
汗ばむような日差しを避けるようにして、
風の抜ける回廊でのんびりと刻んでいく
おそらくは、この老人たちが世を去った後も残るであろう扁額を
それはアジア風な優雅な営み
千年前とて、同じような光景を目にすることが出来たであろうよ
既に我が東方神州日本國では、この手の額は機械が刻む
コンピューターで制御され、納期厳守の味気なさ
風の中に槌音が響くこともない
人の手はすでに、道具を介して素材と語り合うことを忘れてしまった
技術は不要とされ、人間は誰も皆、生きてるだけで穀潰しの厄介者
否、ひたすらに世界を使い潰すだけの虚しい消費者
読者諸君、失礼する。世の中そんなもんさ。
俺が暗室にこだわる理由も、このあたりにあると想うのは、君の考え過ぎだろうよ。

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