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| コペンハーゲンのナイトクラブ |
売春防止法の改正への動きが、活発化している。
今日女性もしくは売春(男性が売春する可能性を否定はしない)する側のみが罪に問われる制度を、買春側の男性(もしくは女性。俺は女性が買春する状況も否定はしない)も処罰するという制度に変えようというモノだ。結構なことだ。(朝日新聞『買収防止法、買う側の勧誘も処罰🔗』参照)
(心にやましいことのない者だけが石を投げるがいいさ。
俺はそれをとやかく言うことはしない。おそらく、設備の更新もままならないような退潮傾向にあるソープランドなどの風俗産業は壊滅し、買売春はアンダーグランド化してしまうか、SNSを通じたものになるだろう。女性たちを保護する法の網をすり抜けて。
それがなくなったとしても、俺自身はいい年だし、鬱病の薬を常用していることもあって、別段困ることはないけれど、上に述べたように結局それが地下で非合法ビジネス化するだけじゃないかっていう気もしますけど、どうでしょうかね。
では、一つの疑問が脳裏に浮かぶ。
この法案が成立すると、人間の性欲は消えるのか?
結論から言えば、法律を施行しても人間の性欲そのものが消えることない。
性欲ちゅうのは、睡眠欲や食欲と同じように、人間の根本的な生理的欲求であり、法規制によってその存在自体をなくすことは不可能だ。法律がコントロールするのは「欲求」ではなく「行動と環境」に過ぎないんだな。
法律を作り、それを守らなければ、罰が与えられる。それって結局、昨日書いたオペラント条件付けと変わらないんだよね。
法律(売春防止法や風営法など)の目的は、人間の本能や欲求を消し去ることではなく、その欲求が社会に現れる「形態」や「場所」、そしてそこに生じる「搾取や人権侵害」を規制することなんだそうだ。
売春防止法の目的は性欲そのものの否定ではなく、「性」を商業的な取引の対象にすること(特に第三者が介入して利益を得ることや、困窮につけ込んだ搾取)を防ぎ、人間の尊厳を守るために制定されているわけだ。
しかし、それで人間の性的な欲求が消得るわけではないから、当然ながら「代替需要」というモノが生み出されるわけだするわけだ。
日本の近代の歴史や他国の例を参照してみても、特定の性風俗業態を法律で禁止した場合、人々の性欲という需要は消滅せず、別の形に変化・移動するわけだ。たとえば、こんなのだ。
①合法的な代替サービスへの移行
法規制の網の目をかいくぐる、新しい形態のサービス(VRやAIを活用したデジタルコンテンツ、非接触型のサービスなど)が誕生・拡大する。絵に描いた餅だぜ。子供の頃に読んだSFみたいだ。
②個人間取引(マッチングアプリなど)の増加
店舗という組織を介さず、インターネットを利用して個人間で直接つながる動きが加速するだろうな。これは今もすでにみられる状況だ。
③海外への流出(性的ツーリズム)
国内での利用が難しくなった場合、規制の緩い近隣国や海外へ需要が移動する。昔、日本が景気がいい頃、日本人の脂ぎったおっさんたちはこぞって東南アジアに買春しにいった。俺は羽振りが悪かったから、そんな機会はなかったが、そんな話はたくさん耳にした。
全人類を去勢したりすることがない限り、どれだけ厳格な法律を作っても性的欲求自体が消えることはない。断言する。だからこそ、現代の頭のいい人たちの議論では「禁止すれば解決する」という単純なアプローチではなく、性的な欲求の存在を前提とした上で、いかに犯罪や人権侵害、公衆衛生の悪化を防ぐか(ハーム・リダクション:被害低減の考え方)が現実的な課題として話し合われているんだとさ。ご苦労なこった。
なんだ、さっきも言ったが、要はオペラント心理学と同じなのさ。
法規制による社会コントロールの仕組みは、オペラント心理学(行動分析学)における「行動変容」の理論と全く同じ構造をしているんだ。
オペラント心理学の視点から見ると、法律の施行と人間の欲求(性欲)の関係は以下のように整理できるんだよね。
①「動機づけ(欲求)」と「行動」の区別
オペラント心理学において、空腹や性欲などは「確立操作(動機づけ操作)」と呼ばれ、行動を起こす内的なエネルギー(動機)を強める役割を持つ。
まず心理学の視点ではこうだ。性的な欲求という確率操作そのものを外部から消去することはできないってことになる。まぁ、ホルモン抑制剤とか去勢とかするなら別だけどね。
じゃぁ、法律の視点だとどうなる?法律を作っても、人間の性欲そのものという『動機』自体は消せないよな。まぁ、ホルモン抑制剤とか去勢とかするなら別だけどね。
そういえば、渋澤龍彦🔗の『高丘親王航海記🔗』には、生殖を禁じられた犬頭の人間が、自らの性器に鈴をつけられているという描写があったな。今でいうところの性犯罪者にGPS機能付きの足輪をつけるようなもんだな。 閑話休題。
法律がターゲットにしているのは、欲求そのものではないんだ。
その結果として現れる「売買春という行動」なんだ。
あらゆるものに値段をつけて売り飛ばすスーパー資本主義社会なのに、人間の性そのものには値段をつけることをしちゃいけないんだそうだ。
どんな人間も、自分の生命というリソース、限られた時間という資本に値段をつけて売っている。なのに、性にまつわることだけが特別視されることに、俺にはどうにも嘘くさく感じるけどね。まぁ、そんなんだからセクハラだって契約を切られたりするんだろうな。
②罰という「弱化」による行動の抑制
法律による厳罰化や取り締まりは、オペラント心理学でいう「弱化(ペナルティ)」にあたる。
行動した結果として「逮捕」「罰金」「社会的信用の失墜」という嫌悪刺激、つまりデメリットを与えることで、その行動の発生頻度を下げようとする試みなわけだ。
③オペラント心理学から見た「地下化」の理由
なぜ法律を厳しくしても、ビジネスが地下化して続いてしまうのかも、この心理学で説明がつく。
好子(報酬)の強さがあるからだ。買売春の当事者にとって、性欲の充足や経済的利益(金銭)という「即時的で確実な報酬(好子)」の価値は非常に高い。
その一方で、弱化の不確実性という観点も挙げられるわな。そう、地下に潜れば「警察に見つかって処罰される(嫌悪刺激)」という確率は下がるだろう。
人間という存在にとっては、「たまにしか捕まらない罰」よりも「目の前の確実な報酬」の魅力のほうが方が勝つため、行動は消去されず、形を変えて維持されることになるわけだ。
これをを分化弱化や逃避行動と呼ぶんだそうだ。
④「消去」ではなく「代替行動」への移行
特定の行動(ソープランドでの取引など)を強力に禁止、つまり弱化すると、人間は欲求を諦めるのではなく、別の方法で報酬を得ようとするだろう。ところてんを作るように、禁止圧をかけると、違うところからにゅるりと欲望が形を変えておしだされてくるのさ。
これを代替行動の分化強化というらしい。
店舗がダメなら「SNSでの個人間取引」へ、国内がダメなら「海外(あるいはネット空間)」へと、より罰を受けにくい別のルート(行動)へと移行するだけのことだ。それが人間というやつさ。
要するに、法律というシステムは「人間の本能(動機づけ)を消す装置」ではなく、「デメリットを付加することで、行動の選択肢をコントロールしようとする環境設定(オペラント条件づけ)」に過ぎないんだ。
だから環境設定に地下組織やネット空間というニッチな隙間があれば、本能に突き動かされた行動はそこへ流れ込んでしまうということになっちまうわけだ。
まあ、偉い人たちはそういう風には考えてないと思うけど、俺たち庶民は法律に触れなきゃ、見つからなきゃ罪じゃないと思ってるからね。それが世の中さ。
しかしまったく、あの俺が嫌悪したオペラント心理学が、実は世の中にしっかり根付いていたということに気が付いた俺の間抜け面が想像できるかい?