2026/02/12

POST#1768 君は宇和島の鯛めしを食べたことがあるか!

宇和島名物 鯛めし
お互い積み重ねた自分史はあるし、いまどうやって暮らしているのかも謎だけれど、とりあえず飯でも食いに行くかってんで、せっかくならということで、宇和島名物の鯛めし🔗を食いに行くことにする。なに、暇だったんでリサーチ済みだ。暇ってのは悪いことばかりじゃない。人生には仕事以外にもやるべきことはいろいろあるってことさ。

ケニーと俺は、35年ぶりに差し向かいで座りとりあえず生中だ。痛風の恐怖をぐっと堪えて黒ひげ危機一髪の気分で飲み干すぜ!

よく考えたら、ケニーと酒を飲むのは初めてだった。幼稚園や小学校の頃はお互い酒飲んでなかったしな。そもそも俺、車で移動し、夜働くという暮らしが長いのと、一人で酒を飲むと鬱のデフレスパイラルで廃人同様になってしまうので、普段は酒を飲まないようにしてるんだ。

久しぶりに会ったケニーは、長年のコーチ生活でなめしたような肌をして、すっかり白くなった髪を伸ばしていた。仙人感半端ない。まぁ、プードルみたいなパーマの俺もインパクトではいい勝負だが。

そんな二人が、旧交を温めあって一杯飲んでいる。鯛めしをつつきながらね。フカの酢味噌あえみたいなのもなかなかよそではお目にかかれないぜ。

ケニーは以前朝日新聞に取り上げられた時には、日本人の奥さんがいたはずだが今はいるような雰囲気もない。聞いてみると、あぁ、あの後スリランカだかインドだかでコーチをしたら収入が激減で、家庭を維持できなくなったんで別れたとこともなげに言う。

俺はカミさんがいて、2016年製の小学生の息子がいて、ローンで家を買って自分で商売してると話すと、家庭を維持できるなんて尊敬するなぁと笑われてしまった。

ケニーはいったいこんなところで何をして暮らしているのか?

見たところ、サッカーのクラブチームがあるようにも見えない。そんな疑問をぶつけてみたら、あっさりと通訳をやっていると答えてくれた。ニューヨーク歴20年以上だから、英語はお手のもんだよな。むしろ日本語よりも得意だと思われる。

宇和島の山の中で、ゼネコンが風力発電所を建設しているらしい。風力発電はヨーロッパが圧倒的に先行している。で、ヨーロッパの発電プラントメーカーから技術アドバイザーが派遣されていて、その通訳をしているらしい。ちなみに、その技術アドバイザーはインド人だそうだ。

日本がほとんど鎖国したようにガラパゴス化している間に、世界の技術の潮流は日本を置いてきぼりにして流れてしまっている。モノづくり大国だなんて思っているかもしれないが、もうそんなパワーはない。次の時代を画期してゆくような革新的なものはこの国からは生まれない。トヨタのハイブリッドぐらいのもんだ。

ケニーはその現場で、不安全な環境に鈍麻した作業体制や、ゼネコンの職員のまとっている島流しにあった不遇なおっさんオーラにうんざりしていた。コロコロ言うことが変わるメーカーの技術アドバイザーにもうんざりしていた。

要は、ここは自分のフィールドじゃないと感じているんだ。

彼のフィールドはサッカー場だからな。

ケニーはそんなことを話しながら生中をどんどんやっつけていく。

で、あんまり料理屋に長居するのもなんだから河岸を変えようぜということになって、あのさみしい商店街のほうにふらふらと俺たちは歩いて行ったんだ。

続くかな。

2026/02/11

POST#1767 少年老い易く…なんだったっけ?忘れたな

宇和島の商店街

 俺が行った日がたまたま商店街が休みの日だったのか、それともとにかくどの店も閉店状態のシャッター銀座なのか。

たった一日しか見ていない俺には、判然としない。

町を歩き回っても、小さな町ではすぐに寂れた街角になってしまうのだが、立派な商店街にも人影はまばらだった。俺の住んでる町以上だ。似たようなもんだし、よく見りゃ同じようなアーケードなんだけどな。

じつは、仕事で日本のいろんなところに言った経験からすると、どこも地方はこんなもんだ。

かつては人でにぎわっていたであろう商店街はシャッターが閉まっているばかり。昔の写真を見ると今では信じられないほどの人々が歩いていた辻々では、猫が日向ぼっこをしているだけだ。人々は車に乗って通り過ぎるだけ。産業がないところからは若者は蒸発し、老人だけが取り残される。戦後の産業構造の変化と、東京をはじめとした大都市への人口集中を止めることはできない。

かつての半自給自足的な経済構造が破棄され、日本全国津々浦々、世界的な自由経済に組み込まれてしまった以上、産業のないところでは自足した生活を営むことはできない。

俺たちは、デュルケームが説いたように社会という巨大な機構の歯車として生きるしか道はないのだ。

俺はそんなことは全く考えず、ケニーからの連絡を持ちながら、グーグルマップでご当地グルメを探しながら歩いた。酔っぱらって宿に帰れなくなるのは困るから、素面のうちに土地勘をつかんでおかないとな。

そうこうしているうちに、連絡が来た。どこにいる?というんで、商店街の信用金庫の前に座っているよと伝えると、すぐにそっちに行くということだった。

俺はぼんやりと、カラオケから所在なさげに出てきた高校生くらいのあんちゃんたちの退屈しきった姿を眺めながら、こんなところでケニーはいったい何をやってるんだ?とぼんやり考えていた。

そうこうするうちに、なんとなく見覚えのある顔の男が、ママチャリにのってやってきた。

「おう」

俺は35年ぶりに会うにもかかわらず、つい先週も一緒に飲みに行った地元のツレのような感覚であいさつした。まるでタイムマシンだ。

「おう、久しぶり」ケニーも似たようなもんだ。もう少しお互い、感極まってもいいんじゃないか?まぁ、いいおっさんが二人して感極まってるのも気持ち悪いが。まったく、少年老い易くなんとやらだ。

お互いに、すっかりおっさんだ。浦島太郎だぜ。

次回に続く。

2026/02/10

POST#1766 人生に謎はつきもんだろう

蝙蝠
あんまり仕事が暇なので、何百本もあるモノクロフィルムをすべてスキャンする計画を立てている。ちなみに今時の若者は、フィルムを使って写真を撮り、ラボでデータ化してもらったらネガはいらないと処分を依頼することもあるそうだ。
しかし、こちとら昭和生まれ。何百本ものネガがうなりをあげている。納戸の棚の中からどす黒いオーラを出し続けて俺の精神を蝕んでいる。何万カットあるのかわからない。
メインで使っていた京セラ・コンタックスT3だけでなく、京セラ・コンタックスG2のネガも埋もれている。G2に至っては、プリントさえされていない。モノクロ時代の前に撮っていたリバーサルフィルムもある。いったい何万カットあることやら。
遠大だ。遠大な計画だ。というか、計画なんかない、行き当たりばったりだ。

そもそも、そんなことをする必要があるのかわからない映像的くずばかりかもしれん。
とはいえ、その映像的くずを飽きもせず何万カットも拾い集めてきたのは、ほかならぬ自分自身だということに、なんというか、流砂のように流れ去ってしまった自分の人生が、決して幻ではなかった証拠のように思える。
俺は、其処に確かにいて、シャッターを切ったのだ。AIじゃないぜ。
この作業を始めてから、読書がなかなか進まない。しかし、こんな時でないとやる気にならないからな。一日で400カットくらいスキャンするので精いっぱいだ。
道は遠い。

さて、物理的に遠い道を、2025年五月の終わりに俺はひた走った。
子供のころの友人、ケニーに35年ぶりに会いに行くために。仕事も休んださ。
仕事なんかよりこっちが大事だ。
一旦単身赴任している京都から地元に帰って、その前の週末に納車されたばかりの車に乗り込み、慣らし運転代わりに片道600キロの道をひた走ったのさ。
途中、京都で借りているマンスリーによって仮眠し、夜明けとともに走り出す。
明石海峡大橋を渡るのは何年ぶりだろう。この辺りでケツが痛くなってくる。

明石海峡大橋 運転しながらの撮影は危険だぜ
ケニーはブラジルからニューヨークに移った後、美術関係の学位をとるために学校に行っていたらしいんだが、当地に暮らす日本人の子供たちにサッカーを教えるというかサッカーチームのコーチをすることになったそうだ。芸は身を助けるだな。
そこから、彼はコーチングの面白さに目覚め、ライセンスを取り23年間ニューヨークでサッカーのコーチをしてきたらしい。全米サッカーコーチ協会の最優秀コーチ賞をとったこともあるらしい。
で、この15年ほどはキルギスタン、ガーナ、ナイジェリア、京都、スリランカなんかを渡り歩きサッカーチームのコーチをして暮らしてきたそうだ。
俺は10年ほど前、彼が京都でコートをしていた時に朝日新聞に取り上げられた記事を今でも大切に持っている。
35年もたって、もう一度逢えるなんて思ってもみなかったぜ。俺は四国の山の中、中央構造線に沿って走る高速道路をひた走り、愛媛の果ての宇和島まで向かった。

しかし、どうしてこんなところにケニーはいるんだ?
こんなところにサッカーチームなんてあるのか?
俺はホテルにチェックインして、彼にメッセージを入れ、返事が返ってくるまで初めての町をぶらつくことにした。
宇和島 ホテルの窓から

宇和島市 須賀川
人生に謎はつきものだ。そして、謎が多いほど面白く、何かしら意味があるように錯覚することができるものさ。まぁ、何かしら自分の人生に隠された意味があるように思えたほうが面白いんじゃないのか?しかし、ぜんぜん人の歩いていない町だな。俺の町も大したことは言えないが、地方はどこに行ってもこんなもんか。日本の行く末が心配になってくるぜ。
諸君、今日はここまでで失礼する。晩御飯の買い物に行くのさ。