しかし、プーチンがウクライナに仕掛けた侵略戦争はまったく常軌を逸している。
まるで、この21世紀に蘇った19世紀の帝国主義だ。クリミア戦争の頃のロシア帝国となんらかわりがない。
あまりにも時代錯誤だが、その時代錯誤な狂気には最新鋭の軍事技術と核兵器がついている。
ロシアの目的はウクライナのNATO加盟阻止だった。拡大するNATOとの間に、バッファゾーンとしての緩衝国家を残しておくという目的だ。もし、本当に侵攻してしまったら、ウクライナがNATO加盟をためらうことはなくなってしまうだろう。その目的を達するためには、侵攻せず圧力をかけるのが良いので侵攻はないという識者の見方は、プーチンにあっさり裏切られた。
プーチンは自国民向けの演説で、ウクライナはロシアと不可分でそもそも歴史的に、ウクライナなんて国家はなく、レーニンによって作り出されたとまでいってのけた。
国家主権なんざ、はなから認めていないというのだ。
プーチンは、ロシア系住民による内紛を抱えるウクライナ東部の2つの地域を、独立国家として承認したという。
いったい何様なのか?皇帝にでもなったつもりだろうか?
そして、そこでウクライナ軍によって行われているジェノサイドを防ぐため、平和維持軍を派遣するという茶番劇だ。その一方で、ウクライナ国内の軍事施設をピンポイントで狙い、その戦闘力を削いでゆき、ウクライナ政府が機能不全に陥ったところを、制圧するだろう。だって、東部2州に傀儡政権を作っても、それだけではウクライナをNATOに追いやってしまうだけだからだ。
ロシアには東部2州を与えるのが現実的な落し所だと言っている識者もいるようだが、今はなき吉本隆明が聞いたら、『何を言っているのだこの頓馬は』と言うこと間違いない。だって、沖縄あたりを中国の国家主席が勝手に沖縄人民共和国として承認したり、あるいはロシアが北海道の根室あたりを西クリル人民共和国として承認し、人民を開放するなり平和維持するという名目で派兵してくることを想像すれば、それが私達にとって理不尽で耐えられないことであるなら、ウクライナの人々にとっても同じように理不尽で耐えられない事態であるという生活実感に根ざした大衆の感覚がどこにもない。もちろん、今日までの歴史的経緯の如何はあるだろうことは理解する。しかし、2度の大戦を経て生み出された国際連合体制はもちろん、国際法も侵略戦争は一切認めていない。
1928年に結ばれたパリ不戦条約以来、それは国際法理であり、今日で言う戦争犯罪という、概念につながるものなのだ。その第一条には、こうある。
『第一条 締約国ハ国際紛争解決丿為戦争ニ訴フルコトヲ非トシ且其ノ相互関係ニ於テ国家丿政策ノ手段トシテ丿戦争ヲ抛棄スルコトヲ其ノ各自丿人民ノ名ニ於テ厳粛ニ宣言ス』
そこからさらに理念的に一歩進めたものが、我が国のいわゆる平和憲法なるものだが、これは国家に紛争の解決として交戦権を一切認めない。
(参考までに、以下に日本国憲法 第二章 戦争の放棄より抜粋する。
[戦争の放棄と戦力不保持及び交戦権の否認]
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。)
この、パリ不戦条約以前の世界こそ、列強帝国が力による実効支配を是認し、国家間の問題は、それが貿易上のものであれ、あたかも個人と個人が決闘を行い、勝ったものの意見がまかり通るのとまったく同じように、戦争が紛争解決の手段として用いられていた。そして、敗者は賠償金をとられ、領土を割譲させられ、人民は為政者の思惑によって、簡単に財産や権利をうばわれ、また殺された。
プーチンが今回やっているのは、そういうことだとと僕は思っている。
民主主義、自由、平等、法に基づく社会。そういった、私達人類がたくさんの犠牲を払ってやっと手にいれ、普遍的な価値へと育て上げようとしているものすべてを、冒涜するような行いだ。
ロシアはあの広大な国土に、日本よりも少し多い一億五千万人ほどの人口しかいない。GDPは人口規模で三分の一しかない韓国よりも下だという。
14年のクリミア半島自治領化以来、国際社会からの制裁で経済成長は年率0.38%ほどだという。
そんな国が、かつてのロシア帝国、あるいはソ連の栄光を懐かしみ、100万の軍隊を擁し、最新の兵器開発に注力する。老獪な権力者は20年前と変わらず、おそろしく権威主義的で、西側諸国への屈折した反感をたぎらせている。体制に反対するものは毒殺される。
僕は、そんな社会はゴメンだ。まだアメリカの属国と言われても、この社会のほうが比較するならはるかに健全だ。
我が国には、紛争解決の手段として、交戦権は認められていない。ゆえにこそ、経済制裁(すでに国力は疲弊し昨今では円の購買力は、50年前の水準にまで後退しているという状況でどこまで効果があるか不明だが)と外交で、粘り強くロシアに抗議していってほしい。
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