2015/03/24

Post #1448

台湾、台北、剥皮寮
なんとなく、今日は写真だけお送りしよう。
いつも長々と文章を読まされると、うんざりするだろう?
書いてるほうにもいろいろとあるものさ。

よく見ると、右の方に現像ムラがあるじゃないか・・・。
まぁ、イイか。それもまた乙なもんだて。

読者諸君、失礼いたす。

2015/03/23

Post #1447

Paris
夜中にプリントしようとして、ふとフィルムの埃を吹き飛ばすために使っているエアコンプレッサーが、けっこうな振動と音を発生させることに気が付いた。
昼間なら全然気にはならないだろうが、しんと静まり返った深夜では、安普請のアパートでは、ちと迷惑というものだ。

プリントはまたの機会に譲ることにして、本棚から本を抜き、読むことにした。

中上健次の『千年の愉楽』だ。
今まで何度も読んだ。しかし、何度でも読み返してしまう。
紀州熊野の被差別部落に生まれた、高貴にして澱んだ血脈を持つ男たち。
その血故に、淫蕩を好み、世間並みに生きることが出来ず、生きる事そのものが苦痛だというように生き急ぎ、生命の絶頂で、あるものは些細なことで刺殺され、あるものは自ら首を吊り、ことごとく命を失う。
その物語の中心には、その男たちの全てを母の胎内から取り出した老いた産婆がいる。この年老いた産婆の回想を軸に、自在に話は時空を駆け巡るのだ。
まばゆい光の照り付ける熊野が舞台でありながら、どこか妖しい夜の気配が漂っている。

日本人が到達した文学の、一つの頂点だと俺は思っているのさ。

明け方まで布団の中で読みすすめ、8割がた読み進めたところで、眠りに落ちてしまった。
夜は開けようとする頃だった。

目を覚まし、腹が減ったので例によってスパゲティーでも作り、食後にコーヒーをドリップして淹れる。十分に休養をとった目で見てみると、家のなかは埃まるけだ。
掃除をする必要があるな。
ここんところサボっている帳簿付も、そろそろやっておかねば月末に面倒なことになるだろう。
自分の人肌のぬくもりが残っている寝ぐさい布団も、カバーを洗い、風を通してやらなけりゃな。

太陽に照らされていると、こうも真っ当な考えが浮かぶものかと、自分でも驚くよ。
やはり人間は、太陽の下で生きるようにできているんだって、納得するよ。

それはそうと、小説を読む合間に、このブログに寄せられた古いコメントを読み返してみた。
何年もコンスタントにコメントを寄せてくれる、殆んど同志のような人々がいる一方で、匿名でコメントを寄せてくれた人もいる。
何度かコメントをよせてくれた後、ぷっつりと便りの絶えてしまった人も大勢いる。
いったいその人たちは、どうしていることだろう。
今も時折覗いてくれているのだろうか?
元気に暮らしているのだろうか?
人と人の縁は、クモの糸ほどにか細く、互いに心して繋いでいこうとしなければ、容易く切れてしまうものだと思い、寂しいような心細いような思いを味わったよ。
みんな、よろしくやっているのだろうか?

読者諸君、失礼する。さてと、夜の仕事までまだ間がある。掃除をしたり、銀行に行ったり、クリーニング屋に冬物の服でも持っていくとするかな。

2015/03/22

Post #1446

夜働き続けることは、精神に悪影響を及ぼす。
芍薬。もう少し暖かくなれば、今年も芍薬を愉しめる。
他人のことは知らないが、俺の心の中には、なんだかよくわからんが禍々しいものが棲んでいるような気がする。
その禍々しいものが、深夜に仕事が終り、ひとり始発を待っている間に、心の奥底でうごめき、日常意識を押しのけて這い出して来る。

世界は深い、昼が考えたよりも深いのだ。

多くの人々が、疲れ果て、座席で眠り込んでいる電車の中で、俺は一人、燃えるような眼をして自分の中を見つめているんだ。

今朝は、少年の頃の自分が、癌で死んだ母親を本質的には死のほうに追いやっていたことを想いだした。
あのとき、弟は、母親を俺が殺したのだと言って、泣き叫んだ。
俺は、何も言い返すことが出来ず、暗がりのなかで立ちすくんでいた。
以来、生きるとはどういうことか、死とは何なのかという、答えのない問いに憑りつかれている。

あのとき、俺は、自分が母親を焼き殺して生まれた火の神になったようにも感じた。

そして、母が存命している頃から他所の女の匂いをさせていた父を、自らの生き方に自信満々であるがゆえに、他人をどこか見下したような父を、長年憎み、この手で殺したいと願っていたことを想いだした。
そしてまた、壮年に到った自分自身が、その父親と本質的には何ら変わりのないモノだと気が付き、自分がもっとも許し難いようにも思った。

そんなどこか禍々しい自分自身が、この瞬間にも胸を引き裂いて、もう一人の自分として表れてきそうな気すらし、それが夜から朝に変る不安定な時間のなせる気の迷いに過ぎないのだと自らに言い聞かせる。

その一方で、その罪を償うために、苛烈な人生を自らに与えてほしい、常人では担いきれないような使命を与えてほしいと、しらじら明けの空を仰ぎ、神とも仏ともつかぬ何かに祈る。虫がイイのかもしれないが、そうして初めて、自分が自分として生きられるようにも感じる。

昇る朝日を全身に浴びながら、駅から家までの道を歩む。そして、オレンジ色に輝く太陽を見つめる。目は当然盲いたようになり、太陽のほかは何も見えなくなる。
腹の底から、禍々しい自分の影を絞り出すようにして息を吐き、新鮮な空気を胸いっぱいに吸う。
太陽が放つ光の粒子が、息とともに身体のうちに入ってくるように感じる。オレンジ色に輝く粒子が、自分の細胞の隅々にまで駆け巡り、闇から生まれた思いを焼き尽くしてくれる。
俺は、こうして、禍々しい自分の想いを振り払う。いつものことだ。

かみさんが荷物をまとめて出ていった。

出張で上海に出かけたのだが、出かける際にくだらない口論になり、俺は玄関の扉を思いっきり閉めたのだった。もし手をかけていたのなら、指がちぎれるほどの勢いだった。
そうしてから、再び眠りにつく。目が覚めた時には世界は夕闇の中に沈んでいた。

そして、今夜は仕事も休みだ。誰も俺のことをかまってはくれないだろう。かまわないさ。

今日よりは また寂しくも 一人旅

読者諸君、失礼する。これからひとりまた飯を食い、夜通しプリントでもして暮らそう。母の子宮の中のような、暗く小さな暗室で、無意識の向こう側を見てみたいのさ。