どうして風邪をひいてしまったのか。旅の疲れ。そう、それもあるだろう。
しかし、俺は決定的にクサイと思ってる原因があるんだ。
そう、あれはマラケシュでのことだった。間口一間もないようなちいさな民族楽器屋で、俺はケッタイな笛を買ったんだ。ねずみ男のような民族衣装を着たすれっからしのおやっさんからね。
なかなか吹っかけてきたんだが、値切り倒して結構納得プライス(それでも2、3000円のもんだ)で購入したんだ。竹でできた笛で、先っぽには動物の角がラッパ状についている。接合部分には金属で装飾がしてあるし、まろやかで且つすっとぼけた低い音が出る。このすっとぼけた間抜け感が大切だ。ゲージュツにはなりそうにない。
俺はその笛を買うなり、宿までブオブオ吹きながら帰って行ったんだ。そう、リコーダーの練習をしながら家路を辿る小学生のようにだ。いくらモロッコでも、そんなタワケはそうはいない。道行くモロッコ人の老若男女も、物珍しそうに見ていたっけ。おかげで、そのあと何回か、モロッコ人のおじさんから、あんた笛吹いてただろうとか言われたなぁ。なかには英語で苦笑いしながら、『あんた下手クソだなぁ』なって言ってる店のオヤジもいる。
しかし、みんな笑っている。いいぞ。俺はこういう愉快なノリが大好きなんだ。
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| Rabat,Morocco |
俺はあっという間に10人くらいのガキどもに取り囲まれた。どいつもこいつも小学校1,2年ってカンジだ。ちなみにモロッコじゃ、これくらいのガキが夜中の11時になっても、路地の少し広い道や小さな広場で、クタクタのボールでサッカーをしている。元気いっぱいだ。荒木経惟のさっちんの世界だ。
これが日本だと、こうはいかない。知らないおじさんに声をかけられタラ、逃げなさいだ。子供たちも、白けた目で見てるだけだ。それどころか、不審者出没情報とか言って、保護者にメールが送信されてしまう。冗談じゃない。俺は愉快なノリで行きたいだけなのに。それが日本の現実という奴だ。ケツの穴が小さいぜ。現実逃避もしたくなるってもんだ。
ガキどもは口々に、『俺にもやらせて』『俺にも吹かせて』と大変な騒ぎだ。コイが泳ぎまわってる池に、パンくずをぶちまけたような騒ぎだ。
問題は、この笛、構造的に7センチほどの竹製のマウスピースをジュッポリと口の中に突っ込まないといけないということだ。吹いていると、喉の奥にあたって、思わずゲボが出そうになるくらいだ。憧れのあの子のリコーダーにこっそり間接キスなんてもんじゃない。間接ディープキスだ。ぐっちょぐちょだ。しかも、中には当然のように青っ洟垂らしたような奴もいる。
しかし、それで『こら、ガキども、どっか行け!』なんて言うのは俺の柄じゃない。言うなれば、ココでビビっちゃ、漢スパークスの名が廃る。それに考えれば、モロッコの平均月収は日本円で25,000円から30,000円てとこらしい。2500円もする様な笛、いくら近所で売っていたって、買えないよな。よし、俺に任せろ、ガキどもよ!そう、俺はガキどもに、吹かせてやったさ。次から次にだ。奴らは奪い合うようにして笛を吹いていた。ちいさな口の奥まで笛を突っ込んでな。どうだガキども、満足したか。
で、見事に風邪ひいちまったって訳。久しぶりに鼻をかんだら、青っ洟が出ちまったぜ。まったく世話ねえや、我ながら。仕方ない。それが人生だ、ロックンロールだ。

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