2014/12/21

Post #1355

Istanbul,Turk
風邪で不如意な身体を横たえ、いろいろと夢想する。
頭をよぎるのは、街で見かけたちょっといい女か。カミサンは、俺を置いて出かけている。夜の仕事までの退屈しのぎに、自分の中で妄想してみる。


初めて抱きよせて、口をつけた途端に感じる唇の柔らかさ。
その味は、なにより甘い。
抱きよせている腕に、力がこもる。
思わず、『人生が狂っちまったら、どうしよう』と口にしてみると、
あなたは呆れたようにくすりと笑って、『そんなことあるわけないじゃない・・・』ともう一度唇を重ねる。

けれど、俺という人間は、骨と血と肉だけじゃなく、出会った人の思い出でできている。
あなたのことを知ってしまったからには、もうさっきまでとは、すっかり違う自分になっているのだ。
俺そのものが変わってるんだから、人生なんて狂っても、おかしくないだろう?
本当の人生は、道を踏み外したときにはじまるものさ。

たわわな胸に顔をうずめると、息すらできないほど。
苦しくなって、ふと、このまま死んでしまうんじゃないかと不安になるが、
それならそれも悪くない。
男として、女性の胸のなかで息絶えるのは、本望だ。
耐えられなくなって、顔をはなしておおきく息を吸い込むと、
甘い体臭とほんのりとした汗の香りが鼻をくすぐる。
そのまま崩れ落ちるようにして、小さなおへそ、そして柔らかく湿った茂みの奥に・・・。

そこにするりとすべり込ませて、そのまま四肢に力を込める。
繋がったままに抱き上げて、生きている人間の重みを確かめるのさ。
あなたは途端に子供のように怖がって、おろしてほしいというだろう。
そして、少し恥ずかしそうに、『重いから…』っていうのさ。
その重みこそが、生の証しだと俺は知っているんだ。

愉悦に眉間は寄せられて、口は開く。その中で舌が小さな蛇のように、俺の舌を待ち受けている。
そんなあなたの顔をながめて、俺は思わず心の底から『かわいいなぁ…』とつぶやく。
あなたはそんな表情のまま、小さく首を振り『かわいくないよぉ・・』と返すのさ。

あなたが自分のかわいらしさを、しらないんだとしたら、残念だ。世界的な損失だ。
それとも照れてるだけなのか?
若さと美しさに溢れた年月は、あっという間に過ぎ去ってしまう。
その絶頂の愉悦の表情を、愛おしく思わない男なんて、俺からすればつまらぬ奴さ。

楽器を奏でるように、あなたに声を出させる。
後ろから見ると、まったく素敵な曲線で、ヴァイオリンかスポーツカーのようだ。
象にも駱駝にも乗ったことのある俺だが、それ以上に揺れている。
テンポをあげたその果てに、『もう行くよ』といえば、
あなたは『そんなこと、いちいちゆうなぁ・・』って唸るように声を絞り出す。
それすらも、可愛らしい。

枕語りに、『君と一緒に、旅してみたいよ』といえば、
やんわり断った心算だろうか、『あたし、外国の食べ物はあわないの・・』

俺は天井を見上げつつ、自分の旅してきた道程を想い出す。

虫たちの鳴き声しか聞こえないバリ島の、ヤモリが壁を伝うやさしい夜を。
昼となく夜となく、祝祭のような熱気に満ちたマラケシュの広場を。
どこまでも青く澄んだアドリア海に浮かぶ、水上の城のようなドブロブニクの街を。
イスラムの礼拝を告げるアザーンが、響きわたるイスタンブールの雑踏を。
どこまでも続く森のあいだ、無数の湖が宝石のようにきらめくフィンランドの大地を。
果てしなく続く雲海の向こうに、そびえたつヒマラヤの峰々を。

俺は、出来る事ならば、あなたに見せてあげたかったのさ。
見も知らぬ世界を渡り歩くことが、どれほどこの退屈な生の慰めとなることか。

どんな愉しい時間にも終わりは来る。
帰りがけ、あなたは俺に『忘れ物は?』と声をかける。
俺は、ポケットを探る。財布、携帯、煙草になんやかんや。
腕時計もしている。全て揃っている。
『忘れ物は、俺の心だけです』と言えば、
あなたは気の利いたジョークだと思って、笑ってくれる。
さようなら。
俺は車の中で、ほんのりと身体にしみついた、あなたの残り香を楽しむのさ。

けど、本当に俺は心を忘れてきてしまったのさ。
出来るなら、そんな俺の心を、あなたがそっと預かっておいてくれるとうれしいよ。

とまぁ、そんな品のない夢想を頭の中で繰り広げてしまった。
ちょっと面白かったので、忘れないように書き記してみた。
気分を悪くしたなら許してほしいぜ。

読者諸君、失礼する。俺はこれから病身に鞭打って、仕事に出かけるのさ。君たちが、これを読んで呆れるころには、俺はそんなこと思う余裕もなく、粉骨砕身、漢だらけの男祭りさ。

2014/12/20

Post #1354

Kathmandu,Nep
人と人の人生の軌跡を、一本の線に喩えるなら、人と人の出会いは、その線の交わる一点だけのことで、2本の線が一つになることはない。

寂しい話だが、それが人生だ。

とりわけ、男と女の線は複雑怪奇。
それぞれの人生で、数多の交点を得て、他の線と切り結ぶような猛者もあれば、
一度交わったきり、もう誰とも交錯しない寂しい人もいる。

まれに交わった二つの線が、ひょんなことから縒り合されるようにして、
同じ軌跡を描いてて所帯をもったりするわけだが、それとて、決して交わらない二重らせんのようなものかもしれない。
そして一度、線と線が激しく火花を散らすように交わったとしても、それはほんの一瞬のことで、再び見える事すら出来るかどうか怪しいものだ。
その後の人生を、かつて味わった愉悦の記憶のみを、思い返し蒸し返すようにして生きることは、生皮をはがされて、熱い鉄板の上を転がされるような残酷さだ。

それを想えば、そんな線と線の、男と女の出会いが良いことかと言えば、酷なモノだなとしか言えない気もする。

どれほど愛しいと相手の身体を抱きしめて、錨を打ち込むようにして一つに繋がり、舌と舌を絡めてみたところで、その愛しく柔らかい肉体のうちに潜んでいる実態は、抱きしめる手指の間を、合わせた口の吐息の合間を、するりと抜けだしてしまって、けっして掴み取ることはできない。

それよりなにより、如何に皆さまに喜ばれるお金を山と積んだとて、人が人をモノのように所有することなどできない。
喩えひととき、90分3万円なりの金で買ったとしても、それはほんの短い時間、身体を交え、刹那の快美に酔いしれるだけのことで、漁師が根こそぎすなどるように、相手の喜びや悲しみの底の底まで、味わい、分け持つことなどできっこない。
それを想うと、泣きたいような底なしの寂しさに打ち震えるのだ。

どうやら人間というのは、肉体という牢獄に繋がれた孤独な囚人のようなものだ。
16歳のあの日に漠然と抱いた思いは、46歳になろうとする今、はっきり確信に変わっている。

いつも、誰とでも、本当に分かり合えない寂しさ切なさを感じるのは、俺の気質的な不具なのだろうか。

知ってほしい、わかってほしい、受け入れてほしいという切なさと、
知りたい、わかりたい、すべてを受け入れてしまいたいという愛しさ。

それでも、その切なさ寂しさは、相手への愛おしさとあいまって、
えい、次こそは、と厭きることない営みに向かわせ、
挙句手ひどく拒絶されたり、前よりむしろ謎が深まったりし、
貧しい心をかき乱すことになる。

生きるというのは、こんな俺には、残酷な刑罰のようなものさ。

読者諸君、失礼する。俺は毎日こんなことばかり考えている。この切なさが俺の言う、『もののあわれ』という奴さ。生きているのは愉しいけれど、同じ分だけ寂しく悲しい。

2014/12/19

Post #1353

Boudhanath,Nepal
本日、体調不良につき写真のみお送りしよう。
咳が酷くて寒気もする。
つまりは、風邪をひいたのだ。
だからと言って、家でいつまでも眠っているわけにもいかないのだ。厳しいもんだぜ。

読者諸君、失礼する。ぐっすり眠りたいよ。