2011/10/13

Post #334 元祖肉眼レフの思い出

先日、フィルムの入っていない写真を使って写真を撮るふりをして、俺を犯罪者扱いするオマワリや、自意識過剰に肖像権を振りかざすバカ女どもをけむに巻いてやろうと考えていたと話しただろう?そう、『肉眼レフもしくは警察官に対するユーモラスな抵抗』という話しだ。あのときの肉眼レフってのは、俺の発明じゃないんだ。実はそれには元祖肉眼レフの先人がいた。俺がこうして書き記していなければ、その方は後世に残ることもないだろうから、忘れないうちに書いておこう。いや、決してネタが無いわけじゃないんだがね・・・。
もう10年近く前になるだろーか。夏の終わりの夕暮れ時、俺は行きつけの写真屋まで、ラボから帰ってきたフィルムを受け取りに行ったんだ、自転車に乗ってね。
道すがら、ベルトに着けたケースから愛用のコンタックスT3を取り出しては、どうということのない地方都市の路地裏をパチリパチリと撮っていた。薄汚れた看板や、猫が覗いているような家々の隙間なんかだ。ルートはいつも気まぐれだ。信号が赤なら、行ったことのない方向にぷいとまがってしまったりする。陽は気まぐれってことさ。
で、市民病院の横にあるグランドで、俺はそのお方に出会ったんだ。
それは頭にタオルを巻いたじいさんだった。白い肌着にステテコ、腹巻もしてたんじゃないだろうか。今となってはおいそれとお目にかかれないファッション・センスだ。トラッディショナルな爺さんスタイルだ。
しかし、それだけならどうちゅうこともないじいさんなんだが、その手にはしっかりと一眼レフが握られていた。そして、沈みゆく夕陽にカメラを向けたり、グランドでサッカーに興じる子供たちを撮っていた。こんななんでもない風景を切り取ろうとは、このジジイ、只者じゃないな。俺は直感したぜ。
HomeTown/元祖肉眼レフじいさん
俺は、そのおじいさんの放つ常人ならざるオーラに魅かれて、つい話しかけてしまった。
実は俺は、尋問のプロだ。初めて会った人からも、いろんなことを聴きだしてしまう才能がある。俺の前では、大方の人は、自分の出身や家族構成や血液型なんかをすぐに話してしまう。面白くなってしまう程だ。君たちも、俺に会った時にはよほど気を付けてかからないと、不用意にいろいろ話して後悔することになりかねんぜ。ふふふ・・・、君たちに会うのが楽しみだな。
俺は、このじいさんにちと興味があったんで、いろいろ聞いてみた。しかし、かなり昔の事なんで、細かいところは覚えてないんだな。残念。
じいさんが、夕陽を眺めながら、頭の中から言葉を拾い集め、不明瞭に発音していたところを解析すると、このじいさん、すぐ近くのお好み焼き屋の店主の父親らしい。一階が店舗で2階が住居。とはいえ何軒かの店舗が並ぶ長屋のような建物なので、どうにも家の中には居場所がないようだ。
なので、表に出て、趣味の写真を撮っているんだという。
しかし、俺はこの年金暮らしのじいさんが、やたらとシャッターをきっていることに、いささか違和感を覚えた。カメラは当然デジカメではない。フィルム代や現像代も、失礼ながらこのじいさんには決して安いものではないだろう。にもかかわらず、じいさん気の向くままにカメラを構え、老眼をモノともせず、ガンガン激写している。
おかしい。
自分で言うのもなんだが、一を聴いて十を知る、ただし2から9は抜けている俺の怜悧な脳みそが、フル回転していた。そうして導き出された答えは、そう、肉眼レフだ、これしかない!
俺はこのじいさんが自分の網膜をフィルムにして、脳裏にこの世の情景を、そう遠くないいつか、永久にオサラバしてしまうであろうこの世の情景を、写し取っているに違いないって思ったんだ。
そう思えば、夏の夕暮れの風景なんて、死んでいくときに、ふと脳裏によみがえらせるのにもってこいの哀愁が漂ってるんじゃないかな。西方浄土ってカンジもするしな。極楽往生間違いなしだ。
俺は、じいさんに決めポーズを撮ってもらい、同じ写真の修羅道を歩むフォロワーとして、じいさんのポートレートを撮らせてもらい、その場を後にした。いつまでも付き合ってると、写真屋が閉まってしまうからね。
あれから、ずいぶんな歳月が過ぎた。俺もすっかり中年だ。じいさん、今でも達者に肉眼レフで写真を撮っているだろうか。それとも、もうとっくにあっちの世界に行ってしまっただろうか。結構丈夫そうだったからな。ひょっとすると、今でもあのグランドの隅で、一眼レフを構えて、肉眼レフと洒落込んでいるかもしれないな。
ジジイになったら、そんな写真の楽しみ方も悪くないって、俺は常々思ってるんだ。
HomeTown/じいさんだけじゃ寂しいんでもう一丁!
読者諸君、今日は一日、来たるべき仕事の段取りで暮れてしまった。やらねばならない事とやるべき事と、やりたい事は必ずしも一致しない。その中で、うまいこと落としどころを探っていくのが、人生の醍醐味ってことだろう。明日こそは、そう、明日こそはプリントしたいもんだ。

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