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| 蝙蝠 |
しかし、こちとら昭和生まれ。何百本ものネガがうなりをあげている。納戸の棚の中からどす黒いオーラを出し続けて俺の精神を蝕んでいる。何万カットあるのかわからない。
メインで使っていた京セラ・コンタックスT3だけでなく、京セラ・コンタックスG2のネガも埋もれている。G2に至っては、プリントさえされていない。モノクロ時代の前に撮っていたリバーサルフィルムもある。いったい何万カットあることやら。
ケニーはブラジルからニューヨークに移った後、美術関係の学位をとるために学校に行っていたらしいんだが、当地に暮らす日本人の子供たちにサッカーを教えるというかサッカーチームのコーチをすることになったそうだ。芸は身を助けるだな。
遠大だ。遠大な計画だ。というか、計画なんかない、行き当たりばったりだ。
そもそも、そんなことをする必要があるのかわからない映像的くずばかりかもしれん。
とはいえ、その映像的くずを飽きもせず何万カットも拾い集めてきたのは、ほかならぬ自分自身だということに、なんというか、流砂のように流れ去ってしまった自分の人生が、決して幻ではなかった証拠のように思える。
俺は、其処に確かにいて、シャッターを切ったのだ。AIじゃないぜ。
この作業を始めてから、読書がなかなか進まない。しかし、こんな時でないとやる気にならないからな。一日で400カットくらいスキャンするので精いっぱいだ。
道は遠い。
さて、物理的に遠い道を、2025年五月の終わりに俺はひた走った。
子供のころの友人、ケニーに35年ぶりに会いに行くために。仕事も休んださ。
仕事なんかよりこっちが大事だ。
一旦単身赴任している京都から地元に帰って、その前の週末に納車されたばかりの車に乗り込み、慣らし運転代わりに片道600キロの道をひた走ったのさ。
途中、京都で借りているマンスリーによって仮眠し、夜明けとともに走り出す。
明石海峡大橋を渡るのは何年ぶりだろう。この辺りでケツが痛くなってくる。
| 明石海峡大橋 運転しながらの撮影は危険だぜ |
そこから、彼はコーチングの面白さに目覚め、ライセンスを取り23年間ニューヨークでサッカーのコーチをしてきたらしい。全米サッカーコーチ協会の最優秀コーチ賞をとったこともあるらしい。
で、この15年ほどはキルギスタン、ガーナ、ナイジェリア、京都、スリランカなんかを渡り歩きサッカーチームのコーチをして暮らしてきたそうだ。
俺は10年ほど前、彼が京都でコートをしていた時に朝日新聞に取り上げられた記事を今でも大切に持っている。
35年もたって、もう一度逢えるなんて思ってもみなかったぜ。俺は四国の山の中、中央構造線に沿って走る高速道路をひた走り、愛媛の果ての宇和島まで向かった。
しかし、どうしてこんなところにケニーはいるんだ?
こんなところにサッカーチームなんてあるのか?
俺はホテルにチェックインして、彼にメッセージを入れ、返事が返ってくるまで初めての町をぶらつくことにした。
| 宇和島 ホテルの窓から |
| 宇和島市 須賀川 |
人生に謎はつきものだ。そして、謎が多いほど面白く、何かしら意味があるように錯覚することができるものさ。まぁ、何かしら自分の人生に隠された意味があるように思えたほうが面白いんじゃないのか?しかし、ぜんぜん人の歩いていない町だな。俺の町も大したことは言えないが、地方はどこに行ってもこんなもんか。日本の行く末が心配になってくるぜ。
諸君、今日はここまでで失礼する。晩御飯の買い物に行くのさ。

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