2011/01/07

Post #50 Transgender #3

まだ引っ張るのかと言われそうだが、生憎俺はかなりくどい。連れ合いからもいい加減うんざりされるくらいねちっこいんだ。
恩も仇も、ずっと忘れないぜ。もちろん君の事もね。
だから、もうイッパツいくぜ!
これでどうだ!
HomeTown In The MidNight Hour
以前働いていた会社にたまに来てくれていたアルバイトに、ニューハーフ志願の奴がいたんだ。
身長が180くらいあったんだけど、線の細い体つきだったな。いつも男の仕事というように、俺の仕事は何時だって肉体労働だ。おかげで中年太りやビール腹には無縁なんだが、彼は明らかに向いてない感じが漂っていた。
彼がニューハーフ志願って事はみんなが知ってる事で、日払いの賃金を貰うと,、せっせとホルモン注射をうちに行っていたらしい。なるほど、いくら単価が安いと言っても、そこはガテン系、コンビニなんかよりは割りがいいからな。彼が、自分にあまり向いていないと感じていても、そこそこ来る理由がわからなくもない。さすがにありゃ保険適応してないだろうからな。
そんな彼の事をみんな、好奇の目で見ていたぜ。例えば最近胸が膨らんできたとか、シャツの下にブラジャーが透けて見えたとか、そんな話しだ。みんな暇で、刺激に飢えているのさ。
俺はといえば、毎日現場をおさめるのに必死で、そんな興味本意の噂ばなしは聞き流していたんだ。それに、自分の主義として、人の趣味嗜好で笑いこけるのは、いかがなものかねぇ?自分が逆の立場だったら、いたたまれないぜ。
OK 、俺はこう見えて、リベラルなんだ。知ってたかい?この汚ねぇ社会で、俺たちが一番大切にしたいのは、各々の自由のはずだろ。なにも金持ちになるのだけが、夢や希望ってわけじゃ、ないだろう?彼の夢と努力を笑う資格は誰にもないのさ。
ある時の事だ。切羽詰まった現場で、彼が他のアルバイトと上手くコミュニケーションがとれなくて、もめていると聞いて、俺は現場の責任者として、様子を見に行った。
みると彼は明らかにやる気を喪失していたんだ。まぁ、仕方ねぇよな。自分の事を珍獣扱いする奴等のなかで働くのは、確かに苦痛だ。しかし、あくまで仕事なんだからな。それに自分の選んだ道がヘビーな道だと分かってんなら、ある程度は我慢もヒツヨーだろう。そうじゃないかい?

俺は彼に言ったんだ。『金貰ってやるからには、あくまで仕事なんだから、きちんと回りと折り合いをつけてやってもらわないと困るぜ』ってね。まぁ、内心は我ながら、正論ではあるが、酷な事いうぜとは思ってたんだが、なんせ現場は火の車。俺のケツには火がつく寸前だった。猫の手も借りたいくらいだ。彼にもきちんと仕事をこなして貰わないと困るんだ。そう、この社会はキビシーのさ。
すると彼はこう言ったんだ。『だって、あの人たちガサツなんですもの』
さすがの俺も、そのこたえにはまいったぜ。ずっこけたってカンジだ。俺は仕方なく、彼を別のポジションに転換したぜ。
HomeTown/Drankers  In The MidNight Hour
それから、彼はアルバイトに来なくなった。きっと、ホルモン注射がジワジワ効いてきて、胸と一緒に仕事や周囲との違和感も膨らんだんだろう。仕方のないことだ。
その後、彼の姿を見かけたって噂も聞いたし、一度、片側3車線もある大きな道の横断歩道も信号もないところを、ふらふらと渡っているのを、仕事帰りの車窓からチラリと見かけたこともある。しかし、会社を辞めた俺には、もうその後の彼の噂は届かない。

彼は今はどうしているだろうか?立派なニューハーフ嬢になって、どこかのクラブでチーママとかになっているんだろうか?もしそうなら、ささやかながらチップでもあげたいもんだぜ!

2011/01/06

Post #49 Transgender #2

う〜ん、ヤバい。またしても窮地に陥ってしまったぜ。今日は税務署に行って、納税の手続きについてソーダンしてきたんだ。で、家に帰って損益計算書と貸借対照表を作っていたんだが 、貸借対照表が合わないのだ。知っての通り貸借対照表は貸方と借方、双方の金額がぴったり合わないといけないんだが…、これが合わないんだな。う〜ん、もう今日はヤメだ。明日だ、明日。明日は帳簿を全部チェックしてみよう。

HomeTown
今日はひとつ、トランスジェンダーの方にまつわる思い出ばなしをしよう。例によって写真には何にもカンケーない話だ。
今から20年近く前、名古屋の栄の地下街を歩いていた時の事だ。当時の俺は、今みたいにもじゃもじゃしてなかったし、スーツも来ていた。いわゆる好青年ってやつを演じていたんだ。仕方ない、前も言ったように、宗教関係の仕事だったからな。
すると、一人の和風を着たご婦人が道に迷っているのを見つけたんだ。名古屋は昔から地下街が発達しているといわれる。このために名古屋の地下街は複雑だと思われるかもしれないが、実は意外と単純で、規模もさほどではないんだ。俺からしたら大坂や東京のほうが、はるかに複雑で規模もでかい。しかし、どんなところでも道に迷う奴は迷うもんだ。とりわけ女はよく迷うんだ。
悪くいえばお人好しでお節介、よく言えば親切で善良な青年だった俺は、その明らかに迷っている風情のその和装のご婦人に、よせばいいのに声をかけた。『どちらに行かれますか?』ってね。その声に振り向いたご婦人の顔には、安堵の色とともに、フレディー・マーキュリーみたいな口髭が張り付いていたぜ!なんてこった!
さすがの俺も、こんときは引いた。ドン引きだ。声をかけて失敗したと思った。だって、女装しかも和服にヒゲだぜ?どっちかにしろよ。しっかりファンデーション塗って、化粧までしてるのにヒゲはないだろ、ヒゲは!あんたはマカロニほうれん荘のきんどーちゃんかよ?それとも、そりゃなんかの罰ゲームかよ!
しかし、人を外見で差別しちゃいけないんだ、差別する奴はいつか自分が差別されても、それを受け入れるしかないからな。
俺は平気のへーざだぜって顔で、『迷っておいでなら、ご案内しましょうか』なんてかましたんだ。すると、ヒゲオバサン、これまた嬉しそうな顔で言うんだよ『あたし、地下鉄の改札がわかんなくなっちゃって…、よかったら教えてくださる?』ってね。俺はとっさに『改札でしたら、僕も今からそちらの方にまいりますから、一緒にお連れしましょう』って言ってしまったんだな。
そしたらヒゲオバサン、にっこり笑って、ありがとうって腰をくねくねさせながらお礼を言うんだよ。マンガだったら、絶対にハートマークが、おばさんの廻りに描かれていただろう。まいったなぁ、まったく…。

HomeTown
そんなこんなで俺は、ヒゲのオバサンを連れて歩きだした。オバサン、なんだか嬉しそうだぜ。で、歩きながら俺に言うのさ『あんた、イイ男ねぇ』ってね。俺は焦ったぜ。今夜付き合わないかって言われたら、問答無用で、ダッシュしてたろう。写真でお届けしてるような方なら、お付き合いしてもイイかもしれないが、ヒゲオバサンじゃねぇ。これは差別とは言わないよな?
ヒゲオバサンのトークは続く。『名古屋の地下街って、広くて込み入ってるでしょ、だからアタシ、分かんなくなっちゃって、困ってたのよ、助かるわ〜。ところでアナタ、お化粧してんの?』 化粧?なんのこっちゃ?『いえ、してないですけど』『あらあら、そうなの?アナタの目、アイラインひいてるのかと思ったのよ』 俺は色が黒い。だから、目の回りの粘膜というか、目の輪郭部分の色素が一段濃くなっていて、見ようによってはそうも見えなくもない。ヤバい、このオバサン、俺の事を同類と思ってないよな?俺は必死に、しかし気にもしてないって口振りで、『あぁ、そりゃ生まれつきなんです』って言うのがやっとだったぜ。
『本当にイイ男ねぇ』なんてダメ押しされた頃、改札が見えてきた。やった!『ほら、あの階段を昇ってすぐ右が改札ですよ』そしたらオバサン『あらあら、ホントにありがとう。またどこかで会いましょう』だって。オバサン、切符を買って改札に消えていったぜ。Thanks God! こうして俺はなんとかピンチをまぬがれたぜ。
今の俺ならもっと余裕で状況を楽しめたんだろうが、いかんせんハタチそこそこのボーヤじゃ、無理だろ。しかし、こうしてみると、俺は昔からホモとかの人に好かれるんだなぁ。俺は若い女の子に好かれたいんだがね。なかなか人生、そうも行かないぜ。
まぁ、それが人生さ、ロックンロールさ。

2011/01/05

Post #48 Transgender #1

OK! 今日はちゃんと約束通りプリントしたぜ。皆の衆、お待たせしたぜ!
年が明けて、ドバドバ仕事のオファーが入ってくる前に、この写真をプリントしたくって、去年の暮れにフィルムを現像に出した時、年内中にあげてくれって無理を言って、年も押し迫った31日に引き取りに行ったんだ。店長のクリハラ君、いつも無理を言ってスマン。こんな俺を許してくれ!
とはいえ、今日ははや5日。そろそろ世間はごそごそと仕事をはじめだすころだ。仕事の電話もちょぼちょぼとかかってきた。暗室にこもっていると電話もすぐには出られないんだ。何せ、大抵露光している時に電話はかかってくるからね。電話がかかってきちゃ、停止液に突っ込むまでしてから、暗室から出て、電話をかけなおす。すると、コーヒーでも飲むかってなるんだよな。我慢すればいいんだけど…。そんなこんなで20枚くらいしか焼けなかったんだ。
しかも、東北や北海道に住んでいる人にしてみれば、ここらの寒さなんか知れているだろうが、寒さの厳しいこの季節、現像液の温度が下がって、ノリがいまいちだ。洗ってみると、ビミョーに現像ムラがあるじゃないか?まいったなぁ…。
しかし、しかしですよ、新年早々気落ちしていても仕方ない。巧くいく時もありゃ、ダメな時もある。それが人生だ、ロックンロールだ。ここは一丁、気を取り直していくぜ。
それでは、お送りしよう。名古屋のニューハーフ嬢だ!

HomeTown In The MidNight Hour
彼女?の名前は…、スマン、酔っ払ってて忘れた。面目無い。次に行く機会があったら、しっかりきいておくよ。名刺とかもらってね。
どうだい、君もニューハーフってきかなきゃ、そうだとは気が付かないだろう。まったく、その辺を歩いてるおねーちゃんと、まるっきり見た目変わんないぜ!長年ネーチャン・フォトグラファーをやってる俺が言うんだから、間違いない。これなら俺、一日連れて歩いてても、問題なしだぜ。
これからは写真を撮るときに、相手がニューハーフかどうか確かめたほうがいいな。声を聴いたらだいたいわかりそうなもんだ。けど、よく考えたら、写真には、ついてるか、ついてないか、もしくはかつてついていたか、なんてことは写らないから、気にする必要もないか?今まで通りにガンガン行きゃいいさ。君も女の子だと思って声をかけたら、実はニューハーフだったってことがないとは限らないぜ。楽しみだな。
しかし実際のところ、そういった人とお近づきになるチャンスってなかなかないからな、それはそれで、なかなかに面白い人生の展開かもしれないぜ。
まぁ、俺なら一向に差し支えないけどね。
写真も人生も、ひたすら来た球を打つ、来ない球は打てないって方針だからな。それもまた一興だぜ。
HomeTown
何と言っても、彼女?達の肉体的なモノにも興味はあるんだが、それ以上に俺は、彼女?達の心の中に興味があるのさ。いつも言うようにね。
人間はそれだけでひとつの完結したちいさな世界を持っているんだ。だから俺は、個々の人間を知ることは、この世界を知ることに、ダイレクトに繋がっていると思っているのさ。
一体全体、彼女?たちからは、この社会はどんなふうに見えているんだろう?
彼女たちには、酔っ払ってニューハーフにデレデレするおっさんたちは、どう見えているんだろうか?きっとフツーのキャバ嬢たちとは見え方が違うだろう。なんて言っても、元男性なんだからな。
どういう経緯で、今の姿になったんだろうか、とか、今日に至るまでに、どんな物語を生きてきたんだろうかとか、考え出せばキリがない。もちろん、これはニューハーフに限らず、どんな人間でも同じなんだが、やはり気になる。
しかし、彼女?たちもまた、こっちに関して興味があるのが、キャバ嬢同様、俺の財布の中身だけだとしたら、サミシー限りですなぁ~。
まぁ、いずれにせよ、もしも機会があったら、ぜひゆっくり話を聞いてみたいもんだぜ。酒じゃなくて、コーヒーでも飲みながらね。
もし、このブログを見ている人に、そんな人がいるのなら、君の声を聴かせて欲しいぜ。

OK! 明日もこのシリーズで引っ張ろうか?
それでは諸君、しばしの別れだ。また会おう。