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| 香港 |
さすがは麒麟児だ。豚児って名前にしておけばよかった。
俺はつねづね、名は体を表すってのは嘘だと思ってる。親の願望を表してるんだ。これは俺が昔、誠って名前の不誠実な奴と働いたときに悟った真理だ。
かの中江兆民🔗は自分の息子が人力車の車夫になっても気恥ずかしい思いをしないように、次男に丑吉という名を付けた。しかし、ご子息は長じて古代中国哲学の碩学として名を成したんだ。
翻って、わが息子麒麟児。自動車や電車のことはたちまち覚えるが、理科の暗記問題は全く覚えられない。算数の解き方も全然覚えられない。漢字も全然だめだ。その気がないんだ。
それでも、本人は平気の平左で、自分の試験結果を見て、改めて勉強に取り組む姿勢を見せるわけでもない。
注意しても、説教しても馬耳東風だ。
あまりの態度の悪さに、こんなの月々結構な額面の塾の月謝をどぶに捨ててるようなもんだと憤慨する。
成績が悪いのは仕方ない。
けれど、まじめに取り組んでくれないのは、命を削って働いている自分からするとやりきれないったらない。もっとも、金を出してるのはカミさんだが、そのカミさんに金を吸い上げられる額が、塾のおかげさまで跳ね上がった。月々じいさんの生活費も面倒見なきゃならないしな。
おかげさまで、飲まない打たない買わないの三拍子そろった服部君に磨きがかかるというものだ。
塾をやめてくくれれば、酒を飲んだり、ギャンブルしたりするのかといえば、それはしないが、みすず書房とかのクソ高い本を買えるだろう。本当に内容のある情報は、ただでネットに転がっていないんだ。身銭を切って手に入れた本を、時間をかけて読むことで、自分の内側に繰りこむことができるんだ。まぁ、読む時間があるかは別の問題としても。
あまりにも経済的に不条理だ。
そこで、昨日は息子に塾をやめてもらおうということになった。
はじめのうちは、カミさんと二人で説得してたんだ。愚息は一旦は納得したみたいだったが、俺が夕食後に部屋で本を読んでいるうちに、いつのまにかまたくすぶりだしやがった。おまけにカミさんは俺と息子に二人で話し合って決めてと俺に下駄を預けてきやがった。
むすこは俺に縋り付いて塾に行かせてくれと懇願する。
なんども何度も懇願するが、どうせ明日からしっかりやるとか言ってもやりゃしないんだ。
俺は息子の腕を突き放しようにして振りほどいた。
勢い余って息子は吹っ飛び、クローゼットの折れ戸に激突した。
同時にクローゼットの扉を吊っている金具が壊れたのか、二枚つながりの扉が倒れてきた。
まるで昔のドリフターズのコントだぜ。
こどもは泣き叫び、カミさんはあぜんとしている。
俺はカミさんに扉が倒れてこないように抑えてるように指示すると、道具を仕事の車から持ってきて、扉を吊りなおした。破損した部品はすぐさまネットで探して発注した。やれやれ、無駄な出費だぜ。
それで塾の話は有耶無耶になっちまった。おかげさんで、今日も塾まで車で送っていったところさ。一体何やってんだか・・・。

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