2015/07/03

Post #1549

Pashupatinath,Nepal
見知らぬ街を歩くのは、愉しい。
昨日の朝も、時間に余裕があったので、築地は勝鬨橋のあたりをぶらついてみた。通勤のサラリーマンがわき目も振らずに歩いている横を、音楽を聴きながらノリノリで、まるで踊っているような足取りで、愉しげに歩くのさ。
東京だろうが、大阪だろうが、名古屋だろうが、パリだろうが、俺ほど愉しげに歩く男を、俺は見たことがない。俺の心の中には、常にゴキゲンなロックンロールが流れているのさ。愉しくないわけがないぜ。
果物がたべたいなと思っていたら、裏通りに小さな八百屋があいていた。人のよさそうなおじさんが店番をしている。イイねぇ。店先には赤や緑の目に鮮やかなリンゴが箱に入ったまま並べられている。一個150円だ。お手ごろだ。
俺はすかさずおじさんに声をかけ、リンゴを一つ買う。そして、袋なんざいらないよ、すぐに食っちまうのさっていうと、おじさんはいいのかい?とか言いながらどこか嬉しそうだ。
俺は買ったばかりのリンゴをズボンでごしごし擦ると、すぐにその場でかじりついた。
リンゴを食いながら、おじさんと世間話をする。
『お客さん、朝からノリノリだねぇ。あんたミュージシャンかい?』
『違うよぉ。おいら工事屋なんだ。仕事をするために昨日この街にやってきたんだ』
『そうかい、俺はてっきりあんたの格好から、ミュージシャンかと思ったよ』
『よく言われるんだ』

そんな話をして、すっかりおじさんと打ち解ける。

『しかし、そんなに楽しそうにしてられるのも、もう2、3年だよ。こんな調子じゃ、徴兵制ができて、兄さん、兵隊にとられちまうよ』
『冗談じゃないよ。どうして日本がアメリカの戦争の片棒担ぎしなきゃいけねぇんだよ。日本がそんなことするべきじゃないよ』
『まったくだよ。けど、日本はアメリカには逆らえねぇからな。逆らうと、田中角栄みたいに潰されちまうんだから。ドイツとかみたいに、アメリカにきちんと意見を言ってやりゃイイのに、こんなのは日本だけらしいよ』
『そりゃそうだ、日本人は昔っからお上によわいからな。今の日本の政治家にとっちゃ、アメリカがお上みたいなもんだよ。』
『はっはっは、違いねぇ。日本人は、そら、昔っから弱きを挫き、強きを助けるだからねぇ』
『違いねぇ。弱気を挫き、強きにぺコペコだよ。長いもんには巻かれろさ。まったく格好悪いぜ』
『兄さん、だからもう何年かすると、あんたも兵隊にとられちまうぜ』
『俺っちは大丈夫、こう見えてもう46だから。軍隊のほうが願い下げってこった。』
『お、そうは見えねぇなぁ。さすがミュージシャンだな。はっはっは!』

こうして俺はすっかりおじさんと仲良くなったんだが、こんな庶民を絵にかいたような人たちでも、いまにおかしなことになるって感じているんだ。
おじさんと別れた俺は、朝の勝鬨橋を、リンゴをむしゃむしゃかっ喰らいながらわたったのさ。なかなか気持ちのいい朝だったな。

読者諸君、失礼する。俺は誰とでもすぐに打ち解けるっていう特技があるんだ。若い女の子だけには、通用したためしがないんだけどね。残念なことさ。

2015/07/02

Post #1548

歌舞伎町2丁目、新宿、東京
久々に東京で仕事だ。
行きの新幹線は、昨日の新幹線車内での焼身自殺の影響で、混んでるんじゃないかと心配していたが、むしろガラガラだった。
ラッシュ時間をさけたのも良かったかもしれないが、誰かがまた焼身自殺しちゃたまらないって、みんな新幹線に乗るのを敬遠したのかもしれないな。
まったく、そんなの見たら、しばらく飯が食えなくなりそうだぜ。すくなくとも焼き肉はしばらくご遠慮させていただくことになるだろうよ。
新幹線の電光掲示板のニュースでは、その焼身自殺した男は、涙を流しながら油をかぶり、自分自身に火をつけたとあった。そりゃ、そんな形でこの世界とおさらばするんだ。涙くらい流したくもなるわいな。
無惨で不可解な事件に、人間の生きる悲しみを垣間見たような気がしたよ。

東京で仕事をすると、どうにも食費がかさむ。
俺は食うことに金をかけるのは好きじゃないんで、なかなかに辛いものがある。
これから2か月も続くのかよ・・・。

たまらないな。

築地本願寺のすぐ東のマンスリーマンションを借りてこの夏を過ごすのさ。こぎれいだが、殺風景だ。現場は銀座で、宿から歩いても10分そこそこ。悪くない。時間を見つけて月島とかぶらぶらしてみるとするか。

しかし、そんな余裕が果たしてあるのかな?

読者諸君、失礼する。

2015/07/01

Post #1547

Bremen,Germany
まだまだ先だと思っていても、不思議と時間は進み、その時がやってきてしまう。
何時だってそうだ。
指折り数えるようにして待ちわびた逢瀬も、その時が来ると、あっという間に過ぎ去って、気が付けば過去の出来事になってしまっていたりする。あとはその記憶を味のしなくなったガムをかみ続けるように、愛おしんでゆくしかない。
まったく、時間ほど無情なものはないのさ。

もう、今年も折り返しを過ぎて、7月になってしまった。
窓の外では雨が降り続いている。朝になれば、この雨の中トランクを転がして出張しなければならないとは、なかなかに気が重い。

出張暮らしは、なにかとままならないもので、好きな本を手元に置いておくわけにもいかないし、食事だっていろいろと難しい。俺は生粋の尾張人なんで、味噌汁は赤だしじゃないと旨いとは思えないんだが、出張して関東なり関西にゆくと、まず赤だし味噌にありつくことはできないしな。
コーヒーだって、自分でドリップして淹れるわけにもいかないしな。間違いなくインスタントコーヒーばかりさ。

なにより、身の回りに女っ気がないのが、侘しくていけないぜ。

読者諸君、失礼する。俺は孤独ってのは好きじゃないんだ。ひとりでふざけてみても、寂しくなっちまうだろう?