| 包丁か、鉈か。 |
陽はとうに昇り、車内の温度は耐えがたいものになり、吹き出す汗の気持ち悪さに目が覚める。
起きてきた子供や女房の話を聞きながら話をしながら、モソモソと食い物を腹に詰め込む。
話は右から左に抜けていく。俺は眠いのさ。眠くてたまらないんだ、
例によって飯を食った後仕事の写真の整理をする。 これをフォルダーにまとめて クライアントに 毎日送るのさ。 俺のクライアントが現場に来ていなくても、現場の状況が手に取るように分かるようにするんだ。
おかげさまで多い時は、一晩に100枚くらい写真を撮るんだ。実は俺の 写真 趣味 っていうのは 現場の写真を撮ってるうちに 面白そうだなと思って 始めてみたものなのさ。 そうあれは長野オリンピックの頃だった。 二度ともう来ることのないだろう 長野の田舎の神社とか 飲み屋街の写真とかを映るんです を買って撮ったりしてたんだ。そっからが始まりだね。
だから俺の現場写真にはどこか君たちにいつもお見せしてるような写真のエッセンスが入ってる。 それが果たして クライアントにとって 見やすいものなのかどうなのかよくわからない。 ま クレームもないからいいけどね。
写真整理をして Google ドライブにアップしたいメールを作ったところでフローリングの床に伸びて眠ってしまった そりゃまあ そうだろう。 俺だって人間だ。そんなこともあるさ。
椎間板の 縮んでしまっている 疲れ切った体には フローリングの硬い床が心地よかったりするんだ。 しかし そんな眠りはすぐに電話のベルで起こされた。
現場で不具合があったからって言うんですぐに現場に行って対応しろって言うんだ。 あまりに酷だぜ。
まさにどっかの首相が『働いて働いて働いて働いて働いてまいります』とか言ってたけど、責任ある仕事をやってる小市民はとっくに働いて働いて働いて働いて働いて倒れるまでやり抜いて、倒れたら這ってでもやるのさ。
少なくとも俺は自分の先輩からはそうやって叩き込まれてきたね。 まる 今の若者とは生きてきた時代が違うってことだ。 決して嬉しいわけじゃないけどね。
しかし 睡眠不足で高速をぶっ飛ばしていくとどうしてあんなに運転が荒くなったり スピードが出ちゃったりするんだろうな〜。
全く こんなことやってちゃ命がいくつあっても足らないよ。
え、今夜?もちろん仕事だよ。
寝てないアピールは高市総理だけの専売特許じゃないのさ。
ちなみにこの鉈だか 包丁だかよくわからんような 刃物。
バリ島のその辺の町並みの朝 散歩してる時にとったものなんだけどきっと 鶏だか ドリアンだかをかち割ったりするんだろうな。手ズレしたグリップや、研がれていないのに、使うところだけ鈍く光る刃先に、写っていない持ち主の身体性が宿る。写真はイマジネーションへの入口であるべきで、けっして百聞は一見にしかず的な、わかり易いモノであるべきではないんだ。
自分の世界への視力を一段上げる踏み台のような写真。
好きだな。
こういう 全く映えない写真が 俺は好きだ。
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