2026/08/21

POST#1945 目を背けてはいけない

 








 

かつて、旅先でのある朝、妻子が眠っている間に早朝の熱帯の町を散策した。

共産党の旗の鎌を思わせる、ヤシの実ナイフ。

切り取られたヤシの実の房。

生々しく原形を留めたニワトリの肉、つまり死骸。

そして、排水溝に朽ちかけた猫の死骸。

それは、けっして世の人々の目を惹くものでもなく、視覚的に素晴らしい感銘や驚きを与えるようなものでもない。

けれど、生きていくうえで、自分が生きているという実感の地平から、これらの対象に視線を注ぎ、目をそらすことができない。


世界は美しくない。故に、美しい。

世界は残酷だからこそ故に、どこまでも優しい。


目の前の世界から、片時も目をそらしてはいけない。

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